「eSportsの存在が新たなユーザーピラミッドを作る」…カヤック×ウェルプレイドが創出する、熱量が高い5つのユーザー層

カヤックは、ウェルプレイドと、去る2017年6月9日にeSports(Electronic Sports)市場を対象とした製品開発、運営に関する業務・資本提携について合意しました。

ウェルプレイドは、eSports市場を対象として、これまでに数多くの対戦型コンシューマーゲーム、スマートフォンゲームのeSportsイベントを企画、開発、運営を通して、ノウハウを蓄積してきました。

一方でカヤックは、国内最大級のスマートフォンゲームコミュニティサービス「Lobi -チャット&ゲームコミュニティ-」(以下「Lobi」)の企画、開発、運営を通じて、ゲームプレイヤーのコミュニティ形成、及び、オンライントーナメント開催、動画技術ノウハウを蓄積。

これまで10社以上の様々なタイトルの大会を手掛ける両社は、お互いの強みを活かして、eSports市場において新たな事業機会を創造しています。

本稿では、そんな両社のキーマンたちを取材。eSports事業の概要をはじめ、両社のシナジー、そして市場の現状など、eSportsに関する様々な要素をうかがってきました。

 

ゲームセンターでの出会いから生まれたウェルプレイド

ウェルプレイド株式会社
代表取締役社長/CEO
谷田優也 氏(写真中央)
代表取締役/COO
髙尾恭平 氏(写真右)

株式会社カヤック
執行役員 Lobi事業部・AI部プロデューサー
片岡巧 氏(写真左)

※「eSports」とは
コンピューターゲームやビデオゲームで行われる競技のことを指します。2022年にはアジアオリンピック評議会が主催するスポーツ競技大会「アジア競技大会」において正式なメダル種目となることが発表されており、世界中でeSports市場が注目されつつあります。

一方、国内でも、コンシューマーゲーム市場はもちろんのこと、昨今ではスマートフォンゲーム市場においても対戦型ゲームが多くリリースされる流れがあり、国内外問わず、ゲーム、及びゲームプレイヤーを取り巻く環境に大きな変化が訪れています。

 

――:ウェルプレイドはeSports専門の企画・運営会社ということですが、代表お二人がお知り合いになったきっかけと設立までの経緯を教えてください。

谷田優也氏(以下、谷田):僕と高尾はどちらも格闘ゲーマーで、知り合う前から渋谷のゲームセンターで『ストリートファイターIV』をずっとやりこんでいました。僕はザンギエフ(『ストリートファイター』シリーズで登場するキャラクターの一人)というキャラクターを使って対戦を重ねていたんですが、ある日そのゲームセンターにかなり手強いプレイヤーが現われたんです。そいつはガイル(同前)を使うプレイヤーで、顔も知らないまま、200回くらい対戦を繰り返していました。

 

――:もしかして、その手強いプレイヤーというのが……。

髙尾恭平氏(以下、髙尾):はい、僕でした(笑)。ただ、当時はお互いにライバルとして意識はしていたけれど、実際に会話をするようなことは全然ありませんでしたね。

谷田:でも7年前のある日、もう何時間も二人で対戦し続けた末に、何というか、お互いに実力を認め合った瞬間があって、それで初めて声を掛けたんです。

髙尾:結局、僕たちは勝率も五分五分でした。

 

――:少年漫画のような出会いだったんですね(笑)。

谷田:当時、僕はエンターブレイン(現:KADOKAWAのブランドカンパニー)にいました。エンターブレインというとゲーム雑誌の印象が強いですが、ソーシャルゲームの開発も行っていて、そこでプロデューサーとして関わっていたんですね。高尾もその時はenishでゲームデザイナーの仕事をしていた時期でしたから、ゲームセンターで初めて話した時には「なーんだ、同業者じゃないか」ということになりました。その後はすぐ意気投合して、時々酒を酌み交わしては、仕事や今後の夢について色々と話し合ったりしました。

 

――:夢というのは、既にeSportsについてアイディアをお持ちだったのでしょうか。

髙尾:そこまで明確ではありませんでしたが、「ゲームセンターにあるゲームがオリンピック種目のような存在になったらいいのに」という夢は抱き続けていました。僕がゲーム業界に入ったのも、いつかそういう時代が来たときに最前線に立てるように、という思いがあったからです。

谷田:「ゲームが上手い人、上手くなろうと頑張っている人が世間で高く評価される時代が来るといいね」、という話はいつもしていました。野球やサッカーの選手にはたくさんの人が注目して賞賛したりするのに、ゲームが飛び抜けて上手いという才能は全然評価してもらえない。高尾も僕も、そういう才能に恵まれた人達はもっと知られるべきだし、新しいスターになれるんじゃないかと考えるようになりました。

やがて、一昨年あたりからeSportsというバズワードが業界で囁かれるようになって、僕の中で夢とか予想に過ぎなかったものが徐々に確信に変わっていきました。きっとeSportsは日本のゲームビジネスの中心に関わってくるだろうと。そういう時代を誰よりも早く迎えるには今やるしかないと思って、起業を決意したんです。そこに高尾も賛同してくれて、一緒に会社を設立しました。

――:その時、既に具体的なビジネスモデルは決まっていたのでしょうか。

谷田:eSportsの領域であれば、とにかくできることは全部やろうと思っていました。起業時には高尾のようにゲームデザインを根本から理解しているクリエイターがいましたし、動画配信が得意なメンバーも1人参加してくれました。

eSportsビジネスはライセンス許諾の交渉が課題になりがちですが、僕はKADOKAWAグループや、マーベラスでライセンス許諾の仕事で何度も経験してきましたから、そこは正直自信がありました。加えて、数千人が参加するようなTCG(トレーディングカードゲーム)の世界大会を運営していた人も役員として僕たちを支えてくれることになりました。本当にメンバーには恵まれていたので、eSportsで包括的に取り組んでいける体制を最初から整えることができたんです。

 

――:現在は、eSportsの大会運営と動画配信が主なサービスという位置づけですか。

谷田:そうですね。ゲームメーカーの方に企画・提案をしつつ、イベントを開催したり、動画コンテンツの制作と配信を行っていくことが中心になっています。

 

――:起業する時はまだeSportsがビジネス的にどれほどスケールしていくのかは、まだまだ未知数だったのではないでしょうか。

髙尾:そうですね。周りからは随分心配されました。

谷田:僕も妻に反対されました。自分のことではなくて、「高尾さんまで巻き込んで、本当に責任を取れるの?」と。

ただ、自分たちのやりたいことと、市場の潮目が丁度重なる絶妙なタイミングだったんです。成功が保証されているわけではないけれども、スマートフォン向けゲームが日本でこれほど浸透し、なおかつ、ニコニコ動画やTwitchなどでゲームの動画を楽しむ人が増え始めていましたから、これは大きなチャンスだと考えていました。

髙尾:渋谷のゲームセンターで谷田と会った時から、ゲームのこと、eSportsのことを僕たちなりに考え続けて、目指していきたい未来像がありました。だから、チャンスが目の前に転がっている以上、僕たちにやらない理由はなかったんです。

 

重要なのは選手目線、観客目線の大会運営

――:そうしてウェルプレイドの設立に至ったということですね。その後、カヤックと業務・資本提携を結ぶこととなりますが、両社にはどのような接点があったのでしょうか。

片岡巧氏(以下、片岡):当社のゲームコミュニティサービス「Lobi」を使ってゲームを盛り上げようというプロジェクトがあって、谷田さんとはそのプロジェクトを通じて初めてお会いしました。その時は、谷田さんには開発者として関わっていただいたので、僕はまだウェルプレイドという会社のことは知りませんでした。

その後、Lobiもリアルイベントや競技大会にもっと力を入れていこうという方針を打ち出して、eSports関連の企業やサービスを色々と研究していくうちに、ウェルプレイドのイベントが企画・運営共に抜きん出ていることを知ったんです。これは是非お話しを伺いたいと思って、谷田さんに会いに行きました。

 

――:ウェルプレイドと他の会社とは、どのような違いがあったのでしょうか。

片岡:eSportsというイベントとしての品質です。参加するプレイヤーにとって納得感のある大会運営をされている、という点がずば抜けて高かったんです。

じつは、今ではウェルプレイドさんが運営されているあるゲームタイトルのイベントを、Lobiでも手がけたことがあったんです。僕はその時に、実質的にイベントの企画開発をしていて、企画設計、ルール作成などの策定を行いましたが、この時にリアルイベントならではの難しさや、緊張感を目の当たりにしました。

その後、そのタイトルのイベントは、ウェルプレイドさんが手がけることになるんですが(笑)。大会としての設計品質、ナマモノであるリアルイベントの成立のさせかたなど、いずれをとってもこれはちょっと……なかなか追いつけないなと。

ウェルプレイドさんの大会はいつも公平なルールと厳正な審査の下で運営されていて、誰にとってもフェアマッチなんです。わかりやすくて、みんなが納得できるルールとはどういうものなのか、谷田さん、高尾さんの隣にいると、とても勉強になります。

 

――:なるほど。ルール策定はeSportsならではの難しさだと思いますが、ウェルプレイドとして特に気をつけていることはありますか。

谷田:僕も高尾もプレイヤーでしたから、やはり選手目線での運営が重要だと考えています。選手や観客にとって不便なこと、理解できないこと、納得できないことをいかに解消していくかが大事ですね。時にはジャイアントキリングが成立したり、大番狂わせが起きたりして盛り上がることも必要ですが、偏った運営では結果とプロセスに不満が残りますし、そのあたりのバランスは徹底的にこだわるべきところだと思います。

髙尾:主催者が大会の趣旨をしっかり決めておくことも結構大事なのかもしれません。大番狂わせのような波乱の展開を見せたいのか、それとも、実力勝負の大会にするのか。そういうコンセプトを定めた上で、はじめて適切な運営が可能になります。ルール策定も含めて、クライアントの企業とは綿密な準備が必要になりますが、そこを含めて何でも僕たちにご相談いただければと思いますし、きめ細かい運営を実現できることが僕たちの強みでもあります。

 

“創出するのは5つのユーザー層”…面白法人カヤックとのシナジー戦略

――:Lobiを運営するカヤックとウェルプレイドは、今後どのようなシナジーを生み出していくとお考えですか。

片岡:カヤックはLobiを含め、オンラインの施策を得意としています。一方、ウェルプレイドはオフラインのイベント・大会運営のノウハウが豊富です。そこで、両社の資産と強みを生かして、eSportsで活躍できる人を生みだしていこうと考えています。目下のところは自社リーグの開催とeSportsメディアの立ち上げを計画中です。その先駆けとして、トーナメント大会を支援するプラットフォーム「Lobi Tournament」を7月にリリースしました。

※「Lobi Tournament」とは
大会開催ページの作成からトーナメントの進行対応まで、主催者がトーナメントをより円滑に管理することのできるトーナメントプラットフォーム。本サービスは、誰でも無料で好きなゲームのトーナメントを主催するために利用できます。

大会支援は、支援条件を満たした大会に、運営からゲーム内アイテムやオリジナルグッズなどの賞品を提供するサービス。支援内容は大会規模が大きくなるほど、豪華になります。

支援タイトルの第一弾として、『クラッシュ・ロワイヤル』『#コンパス 【戦闘摂理解析システム】』『シャドウバース』『戦艦ストライク』『Vainglory(ベイングローリー)』での大会支援を開始。

■「Lobi Tournament」公式サイト
https://vs.lobi.co/

 

――:中長期的なプラン、戦略はいかがでしょう。

谷田:高尾も僕も、ゲームを作る仕事をしつつ、格闘ゲームで対戦を楽しむファンという立場でもあります。ゲームの開発・運営サイドとしては、5年でも10年でも遊び続けてもらえるゲームを作りたいと思っていますし、そのためにはコミュニティとeSportsがやはり重要なファクターとなります。

一方、プレイヤーの目線に立つと、「ゲームを継続して何を得られるのか」という課題が見えてきます。これに対して、今まではゲーム内でアイテムや有償通貨の配布という手法が採られてきたのですが、ゲームの外側にモチベーションの源泉があってもいいんじゃないかと思うんです。

たとえば、最近やっと注目されるようになった「プロゲーマー」と呼ばれる人たちがいますよね。ゲームの上手い人が最高に輝ける場所を用意できれば、ゲームをストイックに続ける立派な理由になりますし、同時に、新しいゲームタイトルに挑戦するきっかけにもなります。つまり、eSportsを軸として、コアユーザーをプロゲーマーへ昇華させながら、新しいユーザー、ライトユーザーを巻き込んでいくというのが僕たちの大きな戦略です。それを図で表すとこうなります。

ユーザーのセグメントは従来、コアユーザー、ミドルユーザー、ライトユーザーという大雑把な区分しかありませんでした。ですが、実態はもっと多様化が進んでいます。コアユーザーの中には職業としてプロゲーマーを本気で志す人も出てきましたし、そういうハイレベルなプレイヤーにファンがつき始めている。これは全然不思議なことではなくて、野球だって「野球は普段やらないけど、観戦するのは大好き」という人はたくさんいますよね。

先ほどの図でいうと、ライトユーザーの更に下層には、観戦が好きな「ファンユーザー」という裾野が広がっているわけです。直接ゲームに関わる層ではないので見落としがちですが、ファンユーザーという観客をいかに増やしていくか、この点も今後注力していくところとなります。

 

――:プロユーザーの育成と活躍の場を提供するのがウェルプレイドの役目であり、ファンユーザーのコミュニケーションを活性化させたり、ライト・ミドル層をサポートする場としてLobiがある、という構図なんですね。

谷田:仰るとおりです。リーグ大会やLobi Tournamentもこの戦略に基づいています。カヤックとウェルプレイドのシナジーは既に効果を発揮していて、このピラミッドを順番に上がっていくというサイクルが動き出しています。

 

――:先ほど、片岡さんが「eSportsメディアの立ち上げを予定している」と仰っていましたが、eSportsメディアは全体戦略でどのような位置付けとなるのでしょうか。

谷田:まずはファンユーザー向けの展開を考えています。スポーツ専門誌のように、ゲーム観戦の楽しみ方を知ることのできるコンテンツが必要だからです。もちろん、その後はハイレベルなプレイヤーの紹介記事や攻略情報も追加していくつもりで、ピラミッドを構成する全てのユーザー、ファンに向けたものにしていきたいですね。

 

――:観戦の見方が分かれば、Lobi Tournamentの利用者も増えていきそうですね。

片岡:そうなんです。トーナメントに参加するゲームプレイヤーのモチベーションを向上させる一つの施策として、「観戦されている」「注目されている」という所は重要だと考えています。一方で、いきなり全国大会に参加するのはハードルが高すぎて躊躇してしまうプレイヤーもいらっしゃると思うんですよね。その点、Lobi Tournamentを使えば、誰でも簡単に小規模・中規模程度の大会を開催することができます。高校野球の地方大会のようなイメージで、まずは近所で良きライバルを見つけて、お互いに切磋琢磨しながら、やがては大規模な大会に挑戦していってもらえたらと思っています。

加えて、「大会を自発的に開催するユーザー」という、これまでに無いユーザー層を生み出すこともできます。eSportsでは「すごく上手というわけではないけれど、好きなゲームタイトルにもっと関わりたい」というニーズも潜在的にあって、そういう思いを「大会の自主開催」という形ですくい上げて、一緒に盛り上がっていきたいなと考えています。

――:現状で感じている課題はありますか。

髙尾:eSportsへの理解は広がってはいるものの、大会を開けば何でも盛り上がる、スター選手が現われるという誤解も生じているように思います。本来、コミュニティにしろ、ヒーローにしろ、一朝一夕で出来上がるものではありません。少しずつユーザーの熱量を高めていって、大会を継続的に開催し、そうして何かしらのドラマティックな出来事が起きて、やっとヒーローが誕生します。ですから、マーケターの方が思う以上に長期的な計画が必要なものなんです。

谷田:今でも「eSportsはこれから伸びるんですか?」といった質問を受けることがありますが、ちょっと有名なタイトルであれば、世界大会に数万人の観客が集まって、オンライン上では世界中のファン数百万人がライブ配信を視聴しています。eSportsはそういう規模のエンターテインメントにまで成長しているんです。マーケターの方々には、この熱量を本当に肌で感じてほしいなと思いますね。

 

――:では最後に、Active Media読者に向けてメッセージをお願いします。

谷田:eSportsは新しいゲーム文化です。日本はスマートフォン向けゲームを遊ぶ人が非常に多いですから、スマートフォンを通してこの熱量をどうやって伝えていくのかが、僕たちウェルプレイドとカヤックのミッションだと考えています。日本のeSportsのけん引役として業界を盛り上げていきますので、ぜひ注目していただければと思っています。

・eSportsに熱狂できるディレクター/アシスタントディレクターも募集中
https://www.wantedly.com/projects/122344

 

――:両社の今後のコラボレーションに期待しています。本日はありがとうございました。

一同:ありがとうございました。 

 

企画・取材・執筆:原孝則、神谷美恵
編集:Active Media編集部

 

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