ゲームタイトルのグッズ展開は切っても切り離せない、とても重要な施策のひとつです。スマートフォンゲームも例外ではなく、各社、開発・運営タイトルにちなんだグッズを制作・販売しています。こうしたマーチャンダイジング(商品化計画)の効果は、ユーザーが該当タイトルの世界観に浸ることができるほか、まだ遊んだことのない方にもグッズを通して訴求できるなど、エンゲージメント及びプロモーションにも寄与していきます。
そんな折、2017年5月、ミクシィのXFLAG スタジオは、『モンスターストライク』を代表とする同スタジオ提供サービスのグッズ販売などを行う常設店舗、「XFLAG STORE SHIBUYA」を東京・渋谷にオープンしました。さらに店舗だけではなく、6月には公式オンラインストア「XFLAG STORE」もオープンし、積極的なグッズ展開に臨んでいます。
“グッズを制作して店舗で販売する”ことは、他社の取り組みとしても見受けられますが、 XFLAG スタジオの場合は常設店舗と公式オンラインストアを立ち上げるから驚きです。一体これにはどんな狙いがあるのでしょうか。
本稿では、ミクシィXFLAG スタジオ XFLAG ENTERTAINMENT部長の田村氏より、同社のマーチャンダイジング全体に関する取り組みについて伺ってきました。お話を聞いていくと、そこには自社IPの強化にも繋がる思想やノウハウを垣間見ることが出来ました。
ゲームの世界観と体験をグッズで届ける
株式会社ミクシィ XFLAG スタジオ
XFLAG ENTERTAINMENT 部長
株式会社XFLAG STORE
代表取締役社長
田村 征也 氏
――:「XFLAG ENTERTAINMENT」の部長をお務めになりながら、実店舗「XFLAG STORE」の運営会社社長としても『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)などのタイトルに関わっていらっしゃいますが、XFLAG スタジオにおけるマーチャンダイジング展開はどのような位置付けにあるのでしょうか。
田村:「XFLAG ENTERTAINMENT」は昨年7月に立ち上げた部署で、マーチャンダイジングを中心とした事業開発とコンテンツマーケティングという2つの大きな役割を担っています。マーチャンダイジングといっても、単なるグッズの制作・販売ではなく、体験と一緒にモノを提供するという取り組みを進めています。
――:ゲームを絡めた体験を重要視しているということですか。
田村:はい。メインに据えているもののひとつがリアルイベントでの物販です。主に「モンスト物産展」や毎年開催している「XFLAG PARK」ですね。今年のXFLAG PARKは7月に開催しましたが、2日間をとおし、延べ約4万人のお客様にご来場いただき、大変盛況でした。いずれも、楽しいイベントの思い出をグッズという形で持ち帰っていただくという思想に基づいて実施しています。
――:ビジネスの拡大よりも、まずは思い出を形にして持って帰ろうというコンセプトがきっかけなんですね。
田村:そういった思いを込めてイベントを行ってきたところ、グッズ販売への要望がたくさん寄せられるようになりまして、それを受けて今年の5月に実店舗「XFLAG STORE SHIBUYA」をオープンさせていただきました。
――:グッズ制作会社から提案を受けてマーチャンダイジングを始めるケースが一般的ですが、XFLAG スタジオではあくまで自社企画にこだわっていらっしゃいますね。
田村:私たちXFLAG スタジオは垂直統合型のブランド戦略を採用しているので、基本的に全て自分たちで考えて作っています。最初は物づくりのノウハウも乏しかったのですが、イベントでの経験を重ねていくうちにニーズを掴めるようになってきました。当初はライセンスアウトという選択肢もありましたが、私たちの価値を市場に届けるために最適な方法を考えた結果、今のかたちとなりました。誰かが介在するよりも、自分たちから直接ユーザーに届けたいということですね。
――:キーホルダーからアパレル小物まで様々なラインナップがありますが、グッズの企画はどのように進めていらっしゃるのでしょうか。
田村:まずは購買シーンを想定するところから始めます。ペルソナを設定してからグッズのラインナップを決めていくようにしていて、そのあたりはマーケティング主導ですね。シーズンも考慮して、たとえば夏季ならTシャツやタオル、水筒といった夏らしいラインナップを検討します。さらに、XFLAG スタジオにはオリジナルの人気キャラクターがたくさんいますから、個性を取り入れたデザインやネーミングにして付加価値を高めていきます。『モンスト』には「ダルタニャン」という人気キャラクターがいるのですが、水属性という設定から長傘にプリントしてみるというような工夫を常に加えるようにしています。
――:ゲームの世界観を尊重したデザインになっているんですね。
田村:その一方で、ゲームの世界観にとらわれすぎないことも意識しています。『モンスト』をまだ知らない人が見ても面白い、格好良いものにしたいんです。もし、キャラクターが全面にプリントされたTシャツがあったら、コアなファンには喜ばれるかもしれませんが、着る場面はちょっと限られますよね。購入者がそのグッズを身につけた時、周りの人からどういうリアクションをされるのかというところまで考えて、企画に落とし込んでいます。
――:なるほど、ゲームのユーザーではない人に対する印象まで考慮していると。
田村:まずはアイテムとして「いいね」と言ってもらえるような仕上がりにして、「実は『モンスト』なんだよ」という驚きを生み出す狙いがあります。そうすることで、『モンスト』自体の存在感を高め、ファンの愛着もさらに深まると考えています。そういったポジティブなサイクルを生み出すためには、既存ユーザーを目がけてグッズを打ち出すよりも、周りの人も巻き込んでさらに喜ばれるもの、良いリアクションをしてもらえるものを展開していくことが重要なんです。コミュニケーションの発生を促すような展開を心掛けています。
■XFLAG STORE SHIBUYAが銘打つ「新感覚のストア」とは
――:そういった取り組みが結実して、「XFLAG STORE SHIBUYA」の立ち上げとなったのでしょうか。
田村:はい。リアルイベントを通してニーズの高まりを肌で感じてきましたし、「モンスト物産展」の地方開催でも長蛇の列ができて、小売店の方にも好評でした。そういう状況だったので、それなら自分たちでやってみようとなりました。
ただ、グッズを陳列して売るだけなら他のショップと同じになってしまいます。そこで、ゲーム・体験・商品を結びつけることで差別化を図り、XFLAG スタジオならではの価値を提供できるような店舗にしたいと考えました。コンセプトも「プレイする新感覚ストア」と銘打ち、興味を引くポイントをたくさん設けて、来店した人が友達や家族につい話したくなるような体験を用意しています。
▲XFLAG STORE 1Fフロア。グッズは、大型のディスプレイのタッチ操作でも購入できます。
▲XFLAG STORE B1F カフェスペース。木目調の落ち着いた内装が特徴。
▲カウンター席には電源が用意されており、スマートフォンの充電にも利用できます。
――:巨大なディスプレイで商品を選んだり、常設のカフェにはユニークなメニューが揃っていたり、細かいところではオラゴンが隠れていたりして、そういったきめ細かい面白さがポジティブな感動を生み出しているんだと思います。
田村:仰るとおりです。入場の際にQRコードをかざしていただいているのですが、その時に『モンスト』のユーザー情報を読み込んでいて、ランクや所持しているキャラクターによって超大型ディスプレイに特別な演出が表示されるようになっています。
人気キャラクターのひとり「パンドラ」をリーダーに設定していると、ストライクショット時のボイスと共にパンドラが出てくる…といった具合です。サプライズ演出は周りの人の注目も集め、そこからお客様同士でのコミュニケーションにも繋がりますし、私たちとしても、やり込んでいただいているプレイヤーの方に対して感謝の気持ちを込めてフィーチャーしたいですからね。
――:「XFLAG STORE SHIBUYA」はオープンして約3ヶ月が経ちましたが、感じている変化や何か新しい発見はあったのでしょうか。
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