マーケティングにおける“データ活用”の最前線【SESSION4-B #1】

(左からモデレーターの豊野氏、AppsFlyerの大坪氏、ファンコミュニケーションズの二宮氏、Septeni Americaの荻田氏、ミクシィ XFLAG スタジオの松尾氏)

2018年4月19日、東京・渋谷にてスマートフォンゲームのマーケティングイベント「Next Marketing Summit 2018」が開催された。

第2回目の開催となる「Next Marketing Summit」は、800人のマーケターと業界関係者が一同に集う大規模なビジネスイベント。当日開催されたセッションのうち、本稿ではB会場で行われた「マーケティングにおける“データ活用”の最前線」の様子を紹介する。

登壇者は、AppsFlyerの大坪直哉氏、Septeni Americaの荻田脩平氏、株式会社ファンコミュニケーションズの二宮幸司氏、株式会社ミクシィ XFLAG スタジオの松尾雄司氏の4名が揃い、モデレーターは豊野桂太氏が務めた。

【登壇者情報】
<スピーカー>
大坪 直哉 – Naoya Otsubo

AppsFlyer
Japan カントリーマネジャー
大学卒業後、舞台俳優の道へ。33歳の時に検索連動型広告の大手、米Overtureに入社。2011年4月より2年間、ビジネス・ブレークスルー大学大学院に通い、MBAを取得。12年には仏Criteoに転職し、アジア太平洋地域担当ディレクターとしてシェア拡大に貢献する。15年7月よりAppsFlyerの日本カントリーマネジャーに就任。ビジネス・ブレークスルー大学大学院同窓会会長。

荻田 脩平 – Shuhei Ogita

Septeni America, Inc
Head of US Office & Customer Success
2010年4月、株式会社セプテーニ入社。国内でインターネット広告全般のメディア運用のコンサルタント職に従事。日本国内における広告運用を経験後、2013年10月よりグローバルプロダクト室に異動、グローバル事業における全世界(日本/アジア/北米)への広告配信を支援。現在はグローバルビジネス全般のミドルオフィス(マーケティング戦略、メディアリレーション、コンサルタント)を統括。

二宮 幸司 – Koji Ninomiya

株式会社ファンコミュニケーションズ
取締役
大学卒業後ファンコミュニケーションズに入社。A8.net営業、新規事業開発セクションを経て2010年スマートフォンアドネットワークnendを立上げ。2013年4月執行役員、2015年3月取締役就任。現在は、ファンコミのアドテクノロジー領域のサービス部門、開発部門、子会社を管掌している。

松尾 雄司 – Yuji Matsuo

株式会社ミクシィ XFLAG スタジオ
モンスト事業本部 マーケティング部 マネージャー
Web専業広告代理店に新卒入社後、運用型広告コンサルタント・メディアバイイングなどを歴任。2015年より株式会社ミクシィに入社。入社後は、日本版・グローバル版モンスターストライクの新規・離反向けプロモーションや、新規タイトルのデジタルマーケティング・グロース領域などを担当。現在は主にUA・離反・エンゲージメント領域を中心としたデジタルマーケティング領域を統括。

<モデレーター>
豊野 桂太 – Keita Toyono

総合広告代理店、出版社、インターネット広告代理店と、マス広告からインターネット広告、メディア事業まで幅広く経験。前職ではスマートフォンアプリ向け広告代理事業立ち上げに従事。現在は株式会社フリークアウトで新規事業を担当し、その他にマーケティング領域で複数社の顧問やアドバイザーも務める。メディアニュートラルな考えのもと、本質のマーケティングにフォーカスした新規事業の創出を担う。年間1000店舗以上訪問する食べ歩き日記は「トヨログ」と呼ばれ、業界内外で支持を得る。

■国内外におけるデータ活用の実態とは

豊野:本日はよろしくお願いします。今回のセッションタイトルは「マーケティングにおける“データ活用”の最前線」ということで、国内・海外のマーケティングにフォーカスしたデータ活用に関して、色々議論できればと思います。ここ最近、データ活用と聞くと、ネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、マーケティング領域でしっかりと活用出来れば、強力な武器になることは間違いないでしょう。

“明日から実践できるデータ活用”ということで、登壇者の皆さんからデータ活用のポイントや具体的な事例、課題などをご教授いただければと思います。実は、事前にゲームマーケター30名の方に「今、どれくらいマーケティング領域でデータ活用されていらっしゃいますか」という質問をお送りさせていただきました。

結果、「積極的に活用し、結果も出ている」は0社で、「活用し始めて、活用する方法は見出している」が13社、「活用し始めているが、見出していない」が9社、「そもそもどう活用すれば良いのか分からない」が7社、「考えてもいなかった」が2社でした。具体的な課題としては、組織体制やインフラ構築、IDの紐づけなどがあるようです。そのあたりの業界課題も皆さんに質問していければなと思っています。それでは、順番にご挨拶いただけますか。

大坪:もしかしたらまだ弊社の名前を知らない方がいらっしゃるかも知れないですが、AppsFlyerはアトリビューションを専門に取り扱っている会社です。アトリビューションとは、メディアごとのコンバージョンへの貢献度を測るなど、言わばアプリの中で起こっていることと流入経路を紐づけることを指します。私たちの視点で見ると、今最もクライアントさんが気にしているのは“不正行為”だと考えています。

日本がグローバルの不正マーケットにおいて、どういう位置づけなのかもご紹介します。日本では、今年の1月、2月だけで23億円くらいの不正が起こっています。グローバルで見ると世界で第4位の規模です。海外で順位が高い国を見てみると、人口が多いか、CPIが多いマーケットです。

要するに掛け算でどちらかが高ければ、不正事業社の懐に入る金額が多くなります。日本においてはクライアントさん含め、性善説で数字を見ている方が結構多いですが、海外では「フェイクの数字じゃないのか」と疑いの目で見ています。AppsFlyerでは、不正なものにお金が払われない、数字が底上げされてないのかも含め、きちんとツールを活用しクレンジングしています。

豊野:実際トラッキングツール会社では、どのようなところにデータ活用のポイントがあると思いますか。

大坪:いつも言っているのは、入口を正しく認識することです。ここで言う入口とは、「ユーザーがどこから来ているのか」「どういう経路で来ているのか」を正しく理解したうえで、施策を積み上げていく必要があるという意味です。これが出来ていないと、データやプロジェクト、ましてやお金を積み上げたところで全てが崩れてしまいます。

たとえば、インストール数が多く見えても、じつはその数字がフェイクだったということもありえるのです。それを知らずにガンガンお金を投資することは、単純にオーガニックユーザーの獲得にお金を使っているということになります。ですので、正しい入口、正しいユーザー流入経路を知りましょうと常に申し上げております。

豊野:ありがとうございます。続いて荻田さん。これまで荻田さんは、海外ゲーム会社を中心にお仕事されてこられたと思いますが、何年くらいモバイル系のマーケティングを担当されているのでしょうか。

荻田:スマートフォンに関わるようになったのは5、6年前くらいからですね。

豊野:ずっと海外ですか?

荻田:1年くらい日本市場に携わり、その後5年ほどは海外でやらせていただいています。

豊野:海外ゲーム会社は、マーケティング領域でデータ活用し始めたのが早いという印象を持っているのですが、国内と海外のゲーム会社を比較していかがですか。

荻田:海外のマーケターについては、とても体制が整っている印象があります。プロダクト別に担当者が分かれていたり、それらを統括する人もマーケティングだけを見ていたりと。AppsFlyerさんもそうですけど、SDKをうまく活用して、動的パラメータなど色々と組み合わせて細かく数字も見ている印象は感じますね。

豊野:なるほど。具体的には国内ゲーム会社との違いってあるのでしょうか。

荻田:大きな違いでは、SDKでトラックする膨大なデータを自社のBIツールとかけ合わせたりして、細かくデータを見ているところですね。広告枠における海外の在庫と日本の在庫にも違いがあります。日本の在庫の本質は一緒だと思うのですが、海外のマーケターで言うと、ファーストパーティデータを活用した運用媒体が非常に多いので、それをうまく駆使してターゲティングしていくという手法がすごく多いのかなと思います。

豊野:ありがとうございます。二宮さんは国内を中心に、ネットワーク事業者として、マーケティング領域におけるデータ活用を見られてきたかと思います。「nend」では、早い時期からDMPを活用した広告配信を実践されていたのかなと思うのですが、きっかけや、今nendで注力しているデータ活用のポイントなどはいかがですか。

二宮:nendは、約8年前にサービスを展開しました。おかげさまでアプリのメディアさんから非常に評価していただいて、導入数が多いです。データ活用に関しては、パブリッシャーさんから取得している広告識別IDが7000万くらいある状況で、それを広告主さんの効果向上に使うところから行っています。

3、4年前からお隣にいる荻田さんと一緒にアメリカのお客様とお仕事をさせていただく機会があり、その時にデータを活用することを前提で全ての話が進んでいき、衝撃的でした。日本でも必ずそういう時代は来るだろうな……ということで、3年ほど前にデータを活用した配信方法を次々と開発をしてきました。

ただ、実際にそれらをリリースしても、クライアントさんがあまりデータを出したくないケースもあります。そういう問題を解決するために、弊社では広告識別IDを引き受ける箱みたいなものを2年前にリリースしました。その後、各社さん非常に多くポストバックしていただいて、そのデータを使ってまたキャンペーン設計をして配信するようなことを行っています。そこがマーケット的に支持されて、数としては増えているのが現状です。

豊野:データの透明性を大切にされているとお聞きしたことありますが、その“透明性”とは具体的にどのようなものでしょうか。

二宮:先ほど大坪さんがお話していたことと同じで、入口をはじめユーザー動向の理解だと考えています。オーガニックのインストールを広告媒体の成果として横取りすることによってその後アクティブになるというのは当たり前なので、入口の透明性を確保するのはnendでも今後やっていきたいです。結局、“透明性の担保”が業界のキーワードになってくると思います。

■『モンスターストライク』のデータ活用術

豊野:ありがとうございます。松尾さん、お待たせいたしました。事前に寄せられた質問の中でも、松尾さん宛ての内容が非常に多くありました。「『モンスターストライク』(以下モンスト)では、どのようなマーケティング領域でデータ活用を行っているのか」……皆さん気になっているみたいです。実際にアプリマーケティングでは早い時期からデータ活用されていると思いますが、そのきっかけは何だったのでしょうか。

松尾:私がミクシィに入社したのは2015年ですが、『モンスト』のリリースから約1年半が経ち、スケールしていくタイミングでもありました。その前からデータ活用する構想はあり、まず前任者の着眼点が良かったというのが背景にあったと思います。ユーザー数が増えればその分データも増えるため、2014年末頃から構想が始まり、2015年の春先頃にはトライアルとしてリエンゲージメントに着手していました。

豊野:その4年前の構想のタイミングでは、何があったのでしょうか。

松尾:やはりユーザーさんのデータが貯まってきたことや、新規及び既存ユーザーさんに『モンスト』を楽しんでいただくために着手しました。いま振り返ってみても、4年前のタイミングで仕組みを作れたのは良かったと思っています。

豊野:その頃は、ちょうどAppsFlyerさんをはじめ、海外計測ツールベンダーが国内進出されてきたタイミングだと思います。

松尾:おっしゃる通りです。測れるものが色々違ったりしたので、ようやく計測の環境が整ってきたと思いました。そのタイミングの前も整っていなかったわけではありませんが、より見られるものが多くなってきたという印象がありました。

豊野:データ活用は現在、どのくらいまで進んでいるのでしょうか。

松尾:難しいですね(笑)。

豊野:お話できる範囲で大丈夫です(笑)。

松尾:少なくともゲーム外データとゲーム内データの突合はしており、エンゲージメント、リエンゲージメントなどのマーケティング活動で活用しています。特に重要視しているのがマルチや起動などのゲーム内イベントで、どんなユーザーさんかを定義して今後のマーケティング施策に役立ていこうとしています。

豊野:海外事情に詳しい大坪さんや荻田さんは、国内外のゲーム会社のマーケティングにおけるデータ活用を見られていて、国内ゲーム会社における課題や何故活用できていないのかなど、思い当たることございますか。

大坪:先ほど荻田さんも仰っていましたが、組織の問題というのはあるかと思います。日本は慣習的にローテーション制度を取っており、2、3年でジョブチェンジ、あるいは全く違った職場になり、学んだものが全く役に立たなくなるときがあります。だから、なかなか社内に経験値が貯まらないのではないかと思います。

なので、それを変えるのが難しい場合は、ツールにデータを貯めていきます。また、ツールは基本的にニュートラルなものなので、そこから何をしなければいけないのかを引き出していただき、実際のアクションに繋げていくのがひとつの解決方法になるのではないかと考えています。

豊野:組織、体制という点において、海外ゲーム会社はいかがでしょうか。

荻田:マーケターにとって、コミュニケーション能力が大切だと思っていて、その中でも「このデータが正しくて、このデータが間違っている」というデータのみを取り扱う組織を持っている点は非常に重要なのかなと思います。海外の広告主様にはそのような組織を持たれているケースが多いですし、そういう意味では海外は進んでいるなと感じますね。

豊野:二宮さんは、このあたりいかがでしょうか。

二宮:お客様とお話するときに一番大きいのは組織の壁です。それはプロダクトサイドもそうですし、マーケティングサイドの方とお話ししていてもそうです。日本の場合は間に代理店さんが入ったりするので、ひとつのデータを見てみんなが共通してマーケティング課題を解決するのは難しいと感じます。それこそAppsFlyerさんで解決できるのならば解決してほしいと思っています。弊社のデータ活用というところでいうと我々の溜まっているデータに対してビジネスサイドが例えばSQLを書いて分析をしています。媒体側のデータ活用も、エンジニアだけでなくビジネス側ができる土壌がどんどん作っていくべきだし、それが広がっていくとマーケ業界的にもそういった人材が増えてきていいことかなと思います。

豊野:では、実際にその体制を国内で作られている松尾さんは、どのようなポイントで体制を作っていくのがいいと考えていますか。

松尾:元々私が入社したタイミングから、デジタルマーケティングを統括していた担当者がエンジニア出身で、体制における考え方は強かったですね。今は組織内にコンサルタント、エンジニア、データサイエンティストも配置され、一緒に同じ目標へ向かっていく環境を体制から整えています。

豊野:ありがとうございます。それでは、トラッキングツール会社で現在実施されていることはありますか。

大坪:今日のテーマでもある“データ”の観点でいうと、いかに多くのデータを手に入れることが、そこから出てくるアウトプットの精度にかかってくると思います。宣伝のようで恐縮ですが、事実としてAppsFlyerは地球上に存在するモバイルの98%の端末IDをデータベースとして持っています。なので、不正かどうかを非常に高い精度でアウトプットできます。

僕らにできることとすると、本当に正しい入口はどこなのかというのを、貯まったデータから出てくるアウトプットを使うことによって判断していくことです。また少し話がずれますが、マジックナンバー分析もツールの中に計算式をいれてできるようになっています。今までだったら社内のリソースを使って時間をかけて出していたデータがリアルタイムに出せるようになってきています。ですので、ツールに頼っていただくことも時には重要なことだと思っており、夜11時まで働く必要はなくなりますし、代理店としても労働集約的なところから価値を創造することに注力することができるようになるなど、僕らのツールがお手伝いできるのではないかと思います。

また、海外のお客さんでよくやっているのが、TVCMから流入してきたユーザーの分析も細かく取っています。AppsFlyerはTV SquaredやSilverPushと連携を取っており、このTVCMから、この地域で、この数分間の間にCMを見たユーザーが流入してきた、ということまで分かるようになっています。そして、該当ユーザーが一体どんな属性なのかを判断して、“そもそもTVCMをやって良かったのかどうか”が分かるのです。

豊野:ありがとうございます。荻田さんはトラッキングツール会社で対応されている点などを把握し、ゲーム会社へデータ活用のマーケティングを提案ある立場として、意識されていること、大切にしていることはありますか。

荻田:SDK会社やパートナーの媒体社様と連携し、広告主の持っているBIツールと、SDK、媒体数値を含めてAPIで叩いていて、常に数字がいつでも見られる状態にしています。驚いたのが、広告主から「この数字すごく良いからもっとあげて」など、レポートを送る前に言われるケースも多いことです。

そこで僕らが付加価値を出すために、媒体別などに捉われず、フォーマット × データや、OSバージョンでどうなのか、端末IDではどうなのかという部分を踏まえた上で、きちんとフィードバックをするように心掛けています。

豊野:荻田さんが担当されている海外ゲーム会社は、色々聞くと、すごく細かいところまでデータ分析されている印象があったのですが、実際に担当されている全部の海外ゲーム会社がそこまで、細かく分析されているのでしょうか。

荻田:もちろん会社ごとにリソースの問題もあるため、どこを誰がやるかを我々と分担するケースは多いです。広告主が100%できる場合は少ないので、それを踏まえた上で我々を活用していただいていると思っています。

豊野:松尾さん、『モンスト』はいかがですか。データ分析に関して、より具体的にお伺いできればと思います。

松尾:弊社の場合はそもそも自分たちでDMPを組み立てています。また、そのデータは生ログから抽出していますので、たとえば広告事業社や計測ツールなどに左右されないデータを取得し、それをベースに皆で運用しています。

ただ、分析というと、正直まだまだきちんとはできていないですね。今でもBIツールをどうするべきかを考えて続けています。我々の場合はスプレッドシートも活用しているのですが、今後を考えた場合、誰もが結果を分かるツールに頼らなきゃいけないかなと思います。

(続きは下記よりご覧ください)

 

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