明日から始められるマーケティングの“データ活用術”【SESSION4-B #2】

(左からモデレーターの豊野氏、AppsFlyerの大坪氏、ファンコミュニケーションズの二宮氏、Septeni Americaの荻田氏、ミクシィ XFLAG スタジオの松尾氏)

2018年4月19日、東京・渋谷にてスマートフォンゲームのマーケティングイベント「Next Marketing Summit 2018」が開催された。

第2回目の開催となる「Next Marketing Summit」は、800人のマーケターと業界関係者が一同に集う大規模なビジネスイベント。当日開催されたセッションのうち、本稿ではB会場で行われた「マーケティングにおける“データ活用”の最前線」の様子を紹介する。

登壇者は、AppsFlyerの大坪直哉氏、Septeni Americaの荻田脩平氏、株式会社ファンコミュニケーションズの二宮幸司氏、株式会社ミクシィ XFLAG スタジオの松尾雄司氏の4名が揃い、モデレーターは豊野桂太氏が務めた。

(前半の記事は下記よりご覧ください)

【登壇者情報】
<スピーカー>
大坪 直哉 – Naoya Otsubo
AppsFlyer Japan カントリーマネジャー

荻田 脩平 – Shuhei Ogita
Septeni America, Inc Head of US Office & Customer Success

二宮 幸司 – Koji Ninomiya
株式会社ファンコミュニケーションズ 取締役

松尾 雄司 – Yuji Matsuo
株式会社ミクシィ XFLAG スタジオ モンスト事業本部 マーケティング部 マネージャー

<モデレーター>
豊野 桂太 – Keita Toyono

■データの蓄積、密な連携、体制の強化――

豊野:データを分析して活用の道筋は見えているゲーム会社は多いけれど、実際に活用できていないケースが多いと思います。お話できる範囲で構わないので、具体的にどんなことを実施されているのか、データ活用の最前線を教えていただけますか。

松尾:少なくとも各広告事業者の計測データとか、生ログを取得する前より効果としては上がっています。やはり我々が指標をある程度決めているので、求めているKPIに対してデータをきちんと見られているというところでは、効果が出ているかなというところです。

ただ、それはあくまでも、たとえばCPAやCPR(Cost Per Retention)などの範囲までしか効果が出ていません。「ゲーム内イベントがどう活用できたか」……という点でも活かしたいのですが、正直まだ活かせていないという状況です。それは我々の今期のテーマでもあります。

豊野:いち早くインハウスにも着手されていると思いますが、行おうとしたきっかけや、やってみての感想などはありますか。代理店にとっては耳が痛い話かもしれないですけれど。

松尾:行おうとしたきっかけは、“データを渡すのが難しい”というシンプルな理由です。だから代理店を挟まないで、事業者と直接やり取りしようと考えました。あとはデータを早く見たい、取り組みを早めたいということもきっかけとなります。

ただ、インハウスにして良かったことも多かったと思います。今だと我々からの要望、つまり「こういう風にやっていったほうがより効果が出るよね」という点を広告事業社と一緒に進められる部分は結構多かったりしました。スピード感を意識しているので、非常に良かったかなと思います。もちろん、全部が良いというわけではなくて、安定した運用のためには代理店にお願いすることもあります。

豊野:『モンスト』だからできるところもあると思いますが、「明日から始めてみよう」となったときに、そうは言ってもリソースはかけられないとなった場合、どのあたりがポイントになってくるのでしょうか。

松尾:本当だったら“体制”と言いたいところですが……。というのも、先ほども申し上げた通り我々の場合はマーケティング・エンジニアがいるので。

すぐできるところでいうと、もう各社仕組みが整ってきているので、今はやりやすいタイミングだと思います。我々が始めた2014年、2015年より確実に簡単になってきているので、まず始めてみることが大切かなと思いますね。あとはきちんとそのデータを見られるかというところです。データを見られるためにレポーティングの部分とかは、BIツールを試してみるのが良いんじゃないかと思います。そういうステップが一番早いと思います。

豊野:二宮さん、データ活用しての広告配信という点、いかがですか。

二宮:僕たちも効果測定の会社とは連携を取っていて、プルダウンでnendを選択していただくだけでポストバックが開始する、非常にシンプルな形での連携になっています。リエンゲージメントという点では、それが一番早いかもしれないです。

もっとデータを活用するとなると、一歩踏み込んだ形で、nendが持っているパブリッシャーと一緒に、クライアントと一対一で、PMPのようなイメージでデータを軸に連携していくスキームというものも次のフェーズで作れれば、可能性が広がるかなと思いますね。

豊野:データ活用のプロモーションでいうと、新規獲得のプロモーションが多いのかなというイメージがあります。踏み切れていないのは、データの質の問題なのかと思うことあるのですが、その辺りで大坪さんはいかがですか。

大坪;海外で成功しているゲーム会社を見てみると、かなり細かくゲーム内イベントを設定しているんですよね。もっと言うと、ゲームをリリースした段階ですべて入っているんです。よく「とりあえずインストールだけ取ってゲーム内イベントは後から」というケースがあります。皆さん人手が少ない中、そういうことも起こるとは思うのですが、リリースしたタイミングからきちんとアプリ内イベントを取って、その結果マジックナンバー分析もできるようになっているんです。

でも、もう少し辿って考えると、アプリ内イベントを入れること自体はエンジニアを使えばすぐにできるのですが、“どういうKPIをなぜ取らなきゃいけないのか”は、社内でコンセンサスを取っておくのがデータ活用では一番重要なのかなと思います。これが決まってないままだと、結局解析にも時間がかかり、なにもアウトプットが出てこないということにもなりかねません。データ活用するときに、一番大事なのは、なにが指標なのかをチーム内で決める、その設計部分ですね。

豊野:ちょっと話を変えまして、どのようにデータを貯めていけばいいか、というところではなにか皆さん考えなどございますか。今は長期タイトルも増えてきて、長期運営になってくると初期からのデータがきちんと貯められているのかといった課題もあるかと思います。松尾さん、過去や現在の『モンスト』はどんなデータの貯め方をしていますか。

松尾:ベースはもちろん、広告識別IDですね。そこに『モンスト』のユーザーIDを紐づけて管理することでゲーム内データと組み合わせた活用ができるようになっています。正直僕もその仕組みを細かくお伝えすることはできないのですが、基本的に運営側とやり取りしていくうえで、IDを取得していくのは気にするポイントではあります。とくに長期タイトルの場合は、過去のデータが残っていない場合が多いので難しいですね。

ただ、今後出てくるタイトルもあると思うので、早めに指標の設計のコンセンサスを握っておくこと、あと注意しなければいけないのは、広告で得られるデータは魔法のデータではないことも知ってもらいたいです。ありがちなのは、「広告計測ツールでなんでも取れるでしょ」と思ってしまうことです。それは間違いで、運営側が必要なデータと、マーケターが必要なデータって、一緒のときもあれば違うときもあります。それぞれの活用の仕方を上手く使い分けて、「これだけのマーケティング効果が出せます」と握っておくのは必要ですね。

豊野:荻田さん、代理店の視点からはいかがですか。

荻田:ちょっと話が変わってしまいますが、大坪さんの話と関連して、代理店の立場からお話しできる“明日から始められること”がひとつあります。凄く基礎的な部分ではあるのですが、可能であれば、積極的に媒体にイベントをポストバックしてほしいなと思います。やはりそれを僕らが見られて、きちんと広告運用に活用できることは非常に重要ですし、かつ媒体社含めてテクノロジーが進歩しているので、ポストバックすることによって効果が改善される部分もあります。

もうひとつ、意外とできていないことが“インストール除外”です。そこの部分もデバイス対応含めて、設定するのみで終わります。これらふたつをしていただくだけで、僕らとしても活用できるデータが変わり、運用の幅が広がります。

■データから探るマーケティングの課題、その是非について

豊野:今回事前にいただいた質問のなかで、「そもそもデータのみからマーケティングの課題を見つけられるのか」というものがありました。マーケティングは、ある程度の仮説を持ってからデータを見るものだと思いますが、データが先行することによって、そこから課題が見つかることはあるのでしょうか。

松尾:結構難しいと思います。仮説がないとそもそもそれが合っているかみたいなところも分からないですし。データを見るだけだと、数字を眺めているだけの話になってしまうので、それはあまり意味がないかなと思っています。

二宮:僕ら媒体社の場合は、やりやすい部分というのがあって、最近でいうとnendがビデオ広告を始めたのですが、そもそもコンバージョンが良いのか悪いのかなど、最初はまったく分からない。配信結果のデータをもとに課題をみつけそこからいくつかパターンを作るのですが、ビデオの場合は分析できるデータが多いため、そこに対しての仮説は非常に立てやすいです。データから仮説をつくり、PDCAを回すということですね。結果として勝ちパターンのビデオを作るというのが最近はできている感じがします。

豊野:荻田さん、代理店の視点からはいかがですか。

荻田:僕らも、クリエイティブ含め、色んな仮説を立てたうえで、データを活用するようにしています。仮説ってキリがないのですが、分解要素をあえて少なめにして、多くても3個程度の仮説から検証するケースが多いですね。

豊野:海外ゲーム会社といえばデータ分析から入るなど、国内ゲーム会社とは、そもそも考え方が違うというお話を聞いたことがあります。その辺りのデータを基にしたマーケティング設計は、代理店の立場から見ていかがですか。

荻田:そうですね。数字を根拠にしてやらせていただくケースも多いですが、やはり海外配信と日本配信の場合で異なると思います。日本配信の場合ではデータを基にする際も「こういうのが当たりやすい」など、日本独自の文化をすごく考えた上で進めていただける広告主も非常に多いので、文化をはじめ様々な要素を組み合わせながらやっています。

豊野:大坪さんは、このあたりいかがですか。

大坪:オンラインマーケティングの良いところは、失敗できるところだと思います。最初から絶対に正解だと思って突っ走るのではなくて、ABテストを繰り返してどんどん正解に近づいていくことが重要で、それができるのがオンラインマーケティングの良いところです。失敗を恐れずにチャレンジして、仮設を煮詰めていくのが重要です。

もうひとつは日本では代理店が「大きな役割」を担っていると思いますが、場合によってはそれが課題解決の阻害要因にもなっているんではないかと思います。どういうことかというと、代理店そのものが悪いということではなく、クライアントが代理店に頼り切ってしまっている場合があります。自分たちがもっと習熟してやれば、代理店の意見に対して、「僕はこう思うんだけど」と意見を言ったり、丁々発止な掛け合いがもっと生まれるのではないかと考えています。やはりお客さんとお話しても代理店に任せきっちゃっていることもあるので、そこが海外との大きな違いだと思います。

荻田:そうですね。海外では全部を代理店に任せるケースはほとんどないので、その中で危機感を感じる部分はありますね。データも見ているし、ゲームも知っている、という広告主を支援していくにあたって、代理店としてもっと付加価値を出すべきだと感じます。日本でいうと媒体社様との連携であったり、データからの仮説と考察、クリエイティブ含めて良いパートナーとしてやらせていただきたいです。

大坪:それが最終的に代理店を鍛えることにもなると思います。マーケットとして底上げされていくことにも繋がります。

豊野:では、質疑応答の時間とさせていただきます。マーケティング領域におけるデータ活用という広義なテーマではあるのですが、ご質問ある方、挙手をお願いします。

質問者:お話ありがとうございました。二宮さんにお伺いしたいのですが、動画を始められて、動画でのリエンゲージメントは進んでいらっしゃるのでしょうか。

二宮:リエンゲージメントに関しては、正直あまり進んでいません。僕らも仮説としては非常に合うのではないかという感覚はあるのですが、リエンゲージメントの目標コストと新規ユーザー獲得コストに開きがあるかなと思っています。新規ユーザー獲得コストのほうが各社さんお金をかけられるので、同じ広告枠だと入札価格で負けてしまう可能性が高いということです。ただはまると良い事例もでてきてはいます。あと、この分野で最先端の『モンスト』さんにぜひチャレンジしていただきたいなと思います(笑)。

豊野:ありがとうございます。他にご質問ある方いらっしゃいますか。

質問者:面白いお話をありがとうございました。日本のマーケティングをやっている会社の中でも、XFLAGさんのマーケティング部署には多くの人がいらっしゃるかと思います。それで全体の中でどれくらいのリソースをかけているのかを聞きたいです。それに加えてセプテーニさんとAppsFlyerさんには海外のゲーム会社のことを色々見られていると思うので、海外の会社の規模の中で、どれくらいのリソースをマーケティングにかけているのか、日本との違いとかがあればお聞かせください。

松尾:XFLAG全体の中では、何人だろうな……。マーケティング部で約70
人ほどは居ると思います。役割としては、デジタルマーケティングは10~15%、リサーチを含めた戦略・宣伝が20%、ほかにもクリエイティブやアライアンスにも結構な人数がいます。

荻田:海外のマーケティングチームに対し、全部でどのくらいのリソースが割かれているかは会社によって異なると思います。国内と比べて違うと思うのは、配信地域カットにするケースと、媒体カットにするケースの二つが存在することです。なので、やはりGoogle、Facebook、Twitterはすごく大きくなるので、そこは全リージョン含めて特定のチームがおこなうケースがあります。

大坪:僕の方も詳しい人数の情報はありませんが、人海戦術というよりかはツールに頼っているケースが多いと思います。ツールから出てくるアウトプットをきちんと分析する人を採用しているような形です。ですので、人がいっぱい居る感じはありません。ただし、その人達は毎日細かくデータを見ていて、リーダーシップがあって、そのリーダーシップの基に決まっていくみたいな。つまり、みんなで話し合って決まっていくわけではないないです。

豊野:ありがとうございます。他にご質問ある方いらっしゃいますか。

質問者:お話ありがとうございました。大坪さんに質問です。AppsFlyerさんは98%のデバイスIDを保持されているということでしたが、それをどう活用していくかのプランはあるのでしょうか。

大坪:ありがとうございます。野球で例えると計測ツールって審判だと思っています。色んな事業がある中の、一つの事業として計測ツールをやっている会社って結構あると思うんですけど、それだとそういう場合って自分が選手でありながら審判もやっている感覚だと思います。僕たちは審判業から絶対に足を踏み外さないと決めていますので、たとえば新しい広告ビジネスを始めるということは絶対にありません。そして業界全体の課題になっている不正に対しては、メディア事業や代理店事業を行っていないということがニュートラルに判断できるという意味でとても効いています。

また中国でAIが発展しているのは、サンプルとして取れるデータがすごく多いからです。人口で考えれば日本より7倍早く正確なアウトプットが導き出せます。それと同様に、僕らも莫大なデータボリュームを持っているので、他社で見抜けないような不正の動きを把握できるようになっています。

クライアントの皆さまが成功に近づけるように、正しい分析、解析手法をこれからも提供していきたいですし、もしかしたらどこかのタイミングで、予測なんてこともできるかもしれません。少なくとも審判業として、皆さんが正確な流入元を知れるような活用方法を考えています。

豊野:最後の総括として、繰り返しになってしまうかもしれないですが、“明日から始められるデータ活用”に関して、一言ずついただけますか。

大坪:明日からできることというと、「AppsFlyerを使ってみてください」になってしまうのですが(笑)。それは冗談としても、数字を見ることを習慣づけるというか、感覚でやることも大事ですけど、それを裏付けるのがデータだと思います。ですので、気軽にご相談いただければと思います。別に使わないと教えないということも全然ありませんので、いつでもサポートさせていただきます。

荻田:僕が海外のマーケットと日本のマーケットの両方を見ながら感じるのは、日本のマーケティングが進んでいる部分もあるということです。しかしながら、代理店においても「Aの効果が良いからAにフォーカスしよう」というケースは多いと思っています。今後しっかり「Aが良い要素は何なのか?」をかけ合わせで見ていくことはやらなければいけないかなというのはすごく感じています。ありがとうございました。

二宮:アドネットワークとしての話になりますが、データだけを見てビジネスをするのが危険な可能性もあります。そのデータが正しいのか、透明性が担保されているのかをしっかり検証していく時代になってきています。データ活用は、マストの時代になってきていますが、データだけに振り回されないようにしてほしいですし、僕らが正しくデータをみれる、つかえる環境を作っていくことを、しっかりやっていきたいと思います。ありがとうございました。

松尾:正直なところ“明日からすぐにできる”ことってなかなかないと思うのですが、強いて挙げるなら、データ全体や各々の数字の見方が複雑になってきているかなと感じます。各社、データの取り方が全然違ったりして、データを見る気をなくしたり、どこを見ればいいか分からなくなったりすることもあると思いますが、そこをあえてシンプルに考えていくのが必要だと思います。

マーケティングのゴールの1つはできるだけユーザーさんを増やすことで、それを整えるために、よりシンプルに、誰でも客観的に見られる、すぐ分かるなど、そういうところが大事だと思います。これは明日からでも意識できると思うので、やっていくべきかと思います。

豊野:皆さん、ありがとうございました。マーケティング領域のデータ活用という広義なテーマではありましたが、本日お越しの方が、少しでもマーケティングにおけるデータ活用のヒントになっていたらと思います。貴重なお時間ありがとうございました、こちらをもって終了とさせていただきます。

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