凄腕マーケ軍団アプリボットに聞く!ユーザーに寄り添うマーケティング秘訣とは【SESSION1-B】

(左から株式会社ファンコミュニケーションズの二宮氏、株式会社アプリボットの三浦氏、adjust株式会社の佐々氏)

2019年4月16日、東京・新宿にて国内最大級のアプリマーケティングイベント「Next Marketing Summit 2019」が開催。

第3回目の今回は、3会場同時進行にて過去最多の14セッションを実施。スマートフォンゲームをはじめ、ニュース、マッチング、ファッションなど多様なジャンルのキーマンが熱いディスカッションを繰り広げました。

本稿ではB会場で行われた「凄腕マーケ軍団アプリボットに聞く!ユーザーに寄り添うマーケティング秘訣とは」の様子を紹介。登壇者は、株式会社アプリボットの三浦慶介氏、adjust株式会社の佐々直紀氏の2名が揃い、モデレーターは株式会社ファンコミュニケーションズの二宮幸司氏が務めました。
 

【登壇者情報】
<スピーカー>
三浦 慶介 – Keisuke Miura

株式会社アプリボット
マーケティングソリューション室 室長

2008年サイバーエージェント入社。ソーシャルゲームのプロデューサー・ディレクターとして『ドリームプロデューサー』など多くのタイトルの開発に従事。2011年、子会社(当時)のCyberXの取締役に就任。2013年より2017年初頭まで株式会社リヴァンプにてオムニチャネル領域を中心に、デジタルマーケティングや新規事業開発に従事。2017年3月よりサイバーエージェントに復帰。子会社のアプリボットにてマーケティングとデータ分析を中心に従事。

佐々 直紀 – Naoki Sassa

adjust株式会社
カントリーマネージャー

2000年からデジタルマーケティングに参入し、モール、サーチエンジン、リターゲティング、DMP等、ECを中心に複数の事業の立ち上げを経験。2015年からアプリリターゲティング広告を通じてアプリ領域へ入り始め、2016年1月よりTUNE日本法人のスタートアップメンバーとしてアプリ計測へと専門領域を移す。2016年11月よりAdjustに入社、現在24名で更に拡張中の日本チームのカントリーマネージャーとしてビジネス拡大を推進中。

<モデレーター>
二宮 幸司 – Koji Ninomiya

株式会社ファンコミュニケーションズ
取締役

大学卒業後ファンコミュニケーションズに入社。A8.net営業、新規事業開発セクションを経て2010年スマートフォンアドネットワークnendを立上げ。2013年4月執行役員、2015年3月取締役就任。現在は、ファンコミのアドテクノロジー領域のサービス部門、開発部門、子会社を管掌している。
 

■3つの軸から見る、アプリマーケティング10年の歴史

二宮:みなさん、こんにちは。ここの会場では、「凄腕マーケ軍団アプリボットに聞く!ユーザーに寄り添うマーケティング秘訣とは」と題して、アプリボットさんにいろいろとお伺いできればと思います。我々も様々なクライアントさんとお付き合いさせていただいていますが、なかでもアプリボットさんは、成功されているひとつのクライアントさんです。その辺りの具体的な施策に関しても切り込んで伺っていきます。では、最初に自己紹介をお願いします。

三浦:アプリボットの三浦と申します。よろしくお願いします。僕は、2008年にサイバーエージェントに入社後、ソーシャルゲームのプロデューサーを担当していました。モバゲータウン(現:Mobage)時代にリリースした1作目がヒットし、その後は事業コンサルティングを行う企業を経て、再びサイバーエージェントに戻り、現在はアプリボットでマーケティングを担当しています。

所属はアプリボットですが、サイバーエージェントグループのゲーム事業の横軸で、マーケティングの新規獲得周りを統括する代表としても動いています。自社タイトルだけではなく、韓国・中国などの海外企業のマーケティングパートナーも担っています。

佐々:Adjust Japanカントリーマネージャーの佐々と申します。私は2000年頃からデジタルマーケティング業界で仕事しています。ショッピングモールやサーチ、リターゲティング広告、DMPなど様々なことをやってきましたが、2016年からアプリ計測へと専門領域を移し、Adjust Japanに参画。現在は24名のスタッフと共に、事業を推進しています。本日はよろしくお願いします。

二宮:よろしくお願いします。佐々さんが計測、三浦さんが広告主、僕が媒体の立場となりますね。さて、まずはちょうどアプリマーケティングが始まってから10年ほど経ちますので、その歴史からみなさんと一緒に振り返られればと思います。前述したように、計測・広告主・媒体の3軸で、どういう変遷でアプリマーケティングが歴史を辿ってきたのか。

はじめに、2010年から2014年のタームで考えます。

アプリボットさんは2010年に設立されていますね。最初はFreeAppNowというアプリを作ったりしていましたが、当時はどういうサービスを行っていたのですか。

三浦:懐かしい名前が出てきましたね。今で言うアフィリエイト媒体の走りです。無料アプリをまとめたアプリで、出稿主さんからお金をもらうというものでした。

二宮:2010年くらいだと、サイバーエージェントグループとしてはこれからスマホ事業に投資していくフェーズだったと思いますが、そもそもアプリボットの設立経緯はどういうものでしたか。

三浦:実は、当時はまだまだガラケー全盛期でした。今になってみれば信じられない話ですが、スマートフォン市場が本当にこれから来るのか、という議論がされていたくらいの時代です。それでもスマホアプリに集中する会社を作ろうということで設立されました。

二宮:なるほど。会社名に「アプリ」と入れたのは、スマホアプリにコミットするという意図があったのですね。僕はファンコミュニケーションズで「nend」というサービスをやっていますが、リリースをしたのが2010年4月くらいです。

まだ当時は媒体軸でいうと、純広告かアドネットワークを選択するしかなかった時代でした。純広告でトラフィックのある媒体を買うか、アドネットワークに流すか。アドネットワークも今のように運用型ではなく固定CPCで、15円で入札するみたいな時代だったと思います。計測に関してはこのタイミングではまだAdjustさんも設立していませんよね。

佐々:2010年だとまだないですね。

二宮:日本だとトラッキングはサイバーエージェントグループの「F.O.X」さんがけん引していましたよね。Cookieベースでトラッキングする手法でやられていて、それが全盛でした。アプリをダウンロードするとCookieを付与するためにブラウザが立ち上がるという時代でしたね。

広告主さんで言うと、国内大手のSNSさん、リクルートさん、ホットペッパーさんなどが出稿していて、目標としてはCPIやCPAが、ガラケーのソシャゲと同じプロモーションの流れで求めていくクライアントさんが多かったと思います。

2012年になると、媒体軸はnendも含めてアドネットワーク全盛の時代になり、メディアさんが個人アプリ開発者であるというような状況でした。App StoreやGoogle Playのランキングにたくさんの個人メディアさんが出てきて、トラフィックがそこに多く存在していた時代です。SNSサービスもこのタイミングでスマホにシフトしていきました。

計測軸では、2013年から広告主側でSupercellさんなど海外の大手広告主さんが日本に進出するタイミングで、海外ツール会社が使われるようになりました。ざっくりと2010~2014年はこのような流れになります。

Adjustさんの日本進出は2014年くらいですか。

佐々:そうですね。日本に進出したのが2014年です。もともとAdjustはドイツの会社で、設立は2012年です。Cookieの話が先ほど出ましたが、Adjustは当初からCookieを使っていませんでした。広告ID、いわゆるIDFAやAAIDでのマッチングを行っていました。

実はAdjust自体は、その前身がデベロッパーの立場でして、そのときにアプリを紹介するようなサービスを始めました。そのアプリの流入がどうだったかという話がきっかけでトラッキングを始めた経緯がありました。

当時はCookieを使っている会社が多かったと思いますが、端末識別IDであるUDIDやAndroid IDというのもありましたね。しかし、あれは2011年くらいにユーザーがオプトアウトできないという問題があって、広告IDが登場し、主流となってきました。Adjustはもともとその広告IDベースのマッチングをやっています。海外トラッキングだと広告IDが主流ですので、2014~2015年でそういう海外サービスが流れてきたという感じだと思います。

二宮:Adjustさんは日本で急激に広まったように思いますが。お客様に支持されているポイントはありますか。

佐々:海外のトラッキングサービスは幅広く実績があるため、弊社にも興味を持っていただいたものだと思います。Cookieを使っていないのでブラウザ立ち上げもないし、動作的にも良さそうといった点や、別のトラッキングサービスの会社さんがサービス終了するときに引き受け先に選んでいただいたことで、事例ができるのが早かったという点で、日本進出のタイミングと合っていました。

二宮:なるほど。フィンガープリンティングによるトラッキングもこの辺りから本格的になってきたと思います。特に日本の場合はWEBサイトのトラッキングがすごく多いですよね。だからフィンガープリンティングをやらないと計測漏れが起きてしまうという。これは海外ではどうですか。

佐々:当然海外でもWEB面での配信はありますし、たとえば自社サイトからの誘導とか、eメールから、QRコードから……などはフィンガープリンティングを使わないといけません。そのため、広告IDベースでユーザーをマッチングさせつつ、フィンガープリンティングでもマッチングをするといった感じですね。Googleの場合はGoogle Play Referrerというものもあります。

二宮:フィンガープリンティングやトラッキングというのが、後ほどに話すアドフラウドの問題にも密接に関わってくると思います。

媒体側では、2014年くらいがSNSのスマホ広告を各社が使い始めたタイミングです。もうひとつ、アドエクスチェンジを行って、CPIでネットワークを拡大していくような事業者さんが増えたという印象です。CPIでグローバル広告をやっている会社が日本に進出してきて、各社クライアントが使うタイミングがここかなと思います。

三浦さんはサイバーエージェントさんに戻ってきて広告主の視点で、戻ってきたときに変わったことはありましたか。

三浦:2012~2017年の間に、アプリがマーケティングしないと生き残れないものに変わっていった、という印象があります。もちろん、もともとマーケティングは必要でしたが、特に2017年辺りから、広告がどんどん複雑化していきました。

広告成果計測が複雑化し、かつアドフラウド問題への対応がとてつもない工数を割いてきたりしました。しかもAppleさんがセールスランキングを撤廃したりもしたので、ユーザーを獲得する経路も手法も、計測の仕方も含めて、すべてがここから大きく変わってきたなという印象があります。

二宮:そうですね。プラットフォームの影響は大きいと思います。あとは、我々もクライアントさんと接していて、2014年以降、ROASベースでコントロールしていくことが増えたタイミングでもあります。

そして現在、媒体ではプラットフォーマー・SNS全盛の時代です。大きく変わったのは静止画メインから動画メインになっているところや、媒体の運用が自動化に進んでいるところですね。

広告主さんの違いは、最近ではゲーム系だけではなくなったこと。たとえば、nendの売り上げ上位でもメディア系アプリのほうがマーケティングにコストを掛けているという状況がありますので、広告主さんの種類も増えてきていると思います。

佐々さん、日本のマーケットとグローバルのマーケットでは、出稿する広告主さんの違いはありますか。

佐々:幅広いジャンルでマーケティングが行われているという観点で広告主さんの違いはあまりないです。ただ、マーケティングの仕方としては日本のお客様の場合は、主要媒体から押さえる傾向がありますね。海外では手広くやって良いものを残す、といった感じです。
 

■マーケターの業務を蝕む、アドフラウド問題

二宮:佐々さんの本職である計測の面で、ここに紐づけて良いのか分かりませんが、アドフラウドが去年から社会問題になっていますよね。インターネット広告がマスメディアになったことで、しっかり対応していかなければいけない問題です。

これは我々のアドネットワークだけではなく、SNS、キュレーションサイトなど様々な問題を通して社会問題になっていったという印象があります。去年は掲載面、botに対して真摯に対応していくという流れが日本のアドネットワーク中心にあったと思います。あと2~3年前から、オーガニックユーザーを広告成果にする手法が増えてきており、現在もそれが横行しているように思いますが他にはどんな不正が行われているのでしょうか。

佐々:オーガニックユーザーを奪い取るのもそうなのですが、大きく分けてふたつあると思います。アプリだとインストールが最初に成果の基準になっており、そのインストール自体を成り済ますという手法。もうひとつはアトリビューションを奪い取るという手法です。オーガニックだとか、ほかのネットワークに本来ついているモノを奪い取とるという手口です。

オーガニックユーザーを奪い取るというのが大半を占めているという印象がありますね。これはクリックスパムという、クリックしていないのにクリックしたというログだけを送る手口や、もう少し高度なものだと、アプリのダウンロードを検知して、そのアプリに関する広告をクリックしたことにするという手口があります。

Androidで可能な方法で、どのアプリをインストールしようとしているかが分かってしまうので、自動的にそういう手口が成り立ってしまいます。本来は広告が貢献していないユーザーなのですけど、自社のアトリビューションに紐づけてしまう手法です。

二宮:三浦さん、広告主の立場として、このアドフラウドの問題を実際に経験したことがあれば、差し支えない範囲で構わないので教えてください。

三浦:大きいもので、累計数千万円単位で被害が出たことがあります。これは個人的な感覚ですが、なにもしないでいると2割くらいの不正を食らっていると思った方が良いでしょうね。場合によっては6割くらい食らっている事例も目にしたことがあります。

これは佐々さんが仰ったオーガニックユーザーを奪い取る事例はもちろんですが、直近の事例では、CPA固定配信型のネットワークが黙って「simeji」に繋いで出稿したものがあります。こっそり検索広告に出稿されていて、ブランド指名キーワードでとってるならCPA低くて当たり前だろうみたいな。オーガニックを成果にする手法だと、逆にそういう技を使ってくることもあります。Adjustさんみたいなツールが入っていないと、最近はアプリマーケティングをやりたくないなと思っています。

二宮:マーケターとしては、不正かどうかが分からないまま仮説検証していくというリスクがかなり高いということですかね。

三浦:非常に高いですね。そもそも配信面が見られない時点でマーケティングのデータが溜まらないので、基本的にマーケティングが進化していかないというリスクがあります。それから、大事な時間が「アドフラウドかそうでないか」という議論に使われてしまうというリスクがあります。

マーケターの本筋はユーザーのみなさんにいかに効率的にリーチするか、ブランドを理解してもらうかというところなのに、数字の正しさの確認に時間を取られてしまうというケースがかなりあります。今の時代は、そういうことがない環境を作ること自体がマーケティングの競争力になっていると思います。

二宮:数字が正しいかどうかから検証しなければいけないのは、マーケターさんにとって大変ですよね。

三浦:そうですね。色んなマーケティングの現場において、数字の検証だけで一日が終わっていることがよくあります。僕はサイバーエージェントグループの横軸で個別にゲーム子会社のマーケティングに入ることもあるのですが、最初にやることが、「分からない数字を見るのをやめる」ことです。実はそれが一番の改善ポイントでもあって、分からない数字の検証ばかりしていると、前に進みません。

二宮:Adjustさんでは、アドフラウドの防止策としてなにをやっているのでしょうか。

佐々:そもそも、なぜAdjustがアドフラウド対策をやっているのかについてお話します。

これは必然的なことで、Adjustにはできるだけ正しいデータを届けるというミッションがあります。アドフラウドを放置してしまうとデータの中身にノイズが混ざってしまっている状態になるので、アトリビューション分析も狂いますし、広告主さんの大事な予算が不正業者に、もっと悪い犯罪組織に流れてしまうという現状があります。

そのため、計測ツールとして除外できる立場にある以上、取り組みましょうというのが経緯です。先ほど仰っていた、本来マーケターが注視すべき時間のために、不毛な時間を取っ払わないといけないというのもあります。

二宮:なるほど。広告主さんと話していて思ったのは、アドフラウドを除外するようなメニューを使うときにコストが掛かるから、ある程度の予算感がないといけないのですが、Adjustさんは結構安いですよね。

佐々:そうですね。安いかどうかは、みなさんに必ずトライアルをしてもらい確認いただいています。アドフラウド対策のためにドイツ本社に専門のチームを置いていますし、我々は正規のインストール件数に対しての課金モデルになっているので、不正防止でカットされた分は課金対象外なのです。事業をやる側としてのモチベーションや研究開発への継続的な投資もあるので、アドフラウドの対策に対して費用をいただいているという形になっています。

トライアルをしていただくと、どこに、どういう不正が、どれくらい出ているかが分かります。そこで、導入したほうが全体の広告コストの削減に繋がるとか、もっと大きい場合はAdjust全体を賄ってもまだおつりが来るみたいな感じにもなるので、規模間の大きいお客様のほうがインパクトは大きいですね。

二宮:わかりました。現在のアプリマーケティングにおけるキーワードは、どちらにしてもアドフラウド対策ですね。あとは、媒体軸では運用の自動化。ただ、自動化していくとアドフラウドに気を取られなくなるリスクもあるということですね。

佐々:そうですね。

二宮:こんな形で10年の歴史を簡単に振り返りました。ここからは、アプリボットさんにいろいろお伺いしていきます。
 

■ユーザーに寄り添うマーケティング

二宮:アプリボットさんはマーケティングコンセプトをしっかりと定義されています。それが「ユーザーに寄り添うマーケティング」です。なぜこのコンセプトに辿り着いたのでしょうか。

三浦:“ユーザーに寄り添う”、というのは本来マーケターからするとものすごく当たり前のことを掲げていますよね。これを定義している理由は、先ほどのアドフラウド問題などを通して、あえて強調しているためです。というのも、デジタルの広告運用やゲーム、メディアの事業サイドにいると、数字を先に見てしまう癖がついてしまい、その奥にあるユーザーのインサイトや動向に目が行かなくなってしまいます。

実際にそれが原因で、アドフラウドで不自然な数字でも気が付かなかったり、TVCMをやろうとしたときに「我々のユーザーってどういう人だっけ」という議論を始めるなど、普段からユーザーを見ていなかったことに気付いたりという経験がありました。その反省から「ユーザーファースト、その次に数字がある」と社内で周知するようになったのです。

二宮:TVCMとか、ネットだけでないマーケティングをしていくなかで、常に軸を持っていないといけないということですね。

三浦:はい。デジタルだからやらなくていい、ということはないですね。

二宮:全体的なマーケティングの概念として、最初に考えなくてはいけないですね。佐々さんから見て「ユーザーに寄り添う」というコンセプトに対してどう思いますか。

佐々:ユーザーに寄り添うというのは、全ジャンルのアプリに言えることだと思います。我々がお手伝いできることは、それを必要としているユーザーと、提供している側をうまくマッチングさせるという点で、いろいろなキャンペーンをやりながら、当たりやすいものとそうでないものを分かりやすく可視化します。

キャンペーン、アドグループ、クリエイティブ毎にどれくらい効率が良かったかが分かるようになれば、将来どこに投下すればどれくらいのリターンが来るのかが分かるようになります。そういうレポートの環境や、ローデータの提供によって、ユーザー分析とか、その後のセグメント作りに活用していただけるようにと思っています。

二宮:なるほど。データ分析についてはいかがですか。

三浦:データはマーケティングの根幹だと思っているので、ゲーム内のデータもそうですし、ツール側のデータも含めて、いつでも見たいものが見られるようにという環境を作るのがスタートラインだと思っています。データがなければマーケティングは出来ないです。

二宮:「いつでも見たいものが見られるように」、というのはサーバーを用意するとか、Adjustさんのサービスを使うとか、環境面でなにかやられているのですか。

三浦:まずAdjustさんのデータは、管理画面で流入経路別のLTVなどがすぐに見られるので、それは頻度高く確認しています。

それから、広告運用が普段のメイン業務なのですが、レポーティングに時間がかかります。そのため、社内ではデイリーのレポートはほとんどすべて自動化しています。それこそnendさんはじめ媒体側からレポーティングのKPIを提供していただいているので、朝に出社した時点でスプレッドシートをみれば、前日の媒体別の出稿金額やROAS、そのうちオーガニックの流入が何パーセントなのか……と、ほとんどすべての見たいデータが見られるようになっています。

二宮:それをやったことで、効率化の面以外で良かったことはありましたか。

三浦:まず時間を取られないので、先ほどもお話したようにユーザーさんのために何をするか、クリエイティブをどうするかという、より大事な方に時間を使えるようになったのは大きいです。

あとは、レポートというものはヒューマンエラーがすごく多いものです。代理店さんからもらうレポートにも、いくら気を付けてもらっていてもコピペミスなどは出てしまう。また、担当者が変わると見ていた指標の入力方法を間違うなど、不注意以外のミスが起きるので、その辺りのやりとりがなくなるというのはものすごく大きいですね。

さらに、そういうやり取りがなくなると、担当者の方にやる気を出してもらえるという、シンプルに良い点があります。いかにそのタイトルを伸ばすかに注力できるので、風通しが良くなり、本質的なワンチームが作りやすくなります。

二宮:たしかに。佐々さん、さきほどローデータというお話がありましたけども、具体的にローデータをどう活用するのでしょう。

佐々:いろいろなケースがありますが、大きく分けてふたつあります。ひとつはユーザーの分析に。もうひとつはリタゲやエンゲージメント広告をやる場合の、セグメントを切る用途ですね。Adjustでは取得できるデータの種類が現在160種ほどありSDKとしては最多だと思います。

そしてお客様の好みによって、データを自社サーバーに溜めるか、もしくはAmazonのS3バケットや、GoogleのクラウドストレージでBigQueryなどに繋ぐことができます。全部繋ぎ込みができるようになったので、ある会社さんではそこからSlackに繋いで、自動でレポートに展開するということもやっています。最近多くなってきたのが、マーケターさん自身がSQLを叩いて、柔軟にセグメントリストを抽出するケースです。そこは今後必要とされる新しいスキルセットなのかなと思いますが、そういうことに活用していただいています。

二宮:データ分析の環境はかなり整ってきていますよね。僕らはnendでは、Treasure Dataというサービスも使っています。SQLを書いて、データを抽出するみたいなことが簡単にできるようになってきているので、この辺りの環境はどんどん整備されていくのかなと思います。Adjustさんはデータ系ベンダーとシームレスに連携できるみたいなことはやられているのですよね。

佐々:そうですね。DMPさんとのテクノロジーパートナーとしての連携などは、お客様の要望があればどんどん対応するパートナーを増やしていき、よりやりやすい環境を作っていきます。これも、Adjustのミッションです。

二宮:次に三浦さんにお聞きしたいことがあります。先ほど10年の歴史のなかでも話に挙がりましたが、最近は運用の自動化、海外のサービス、大手のプラットフォーマーへの予算が大きくなってきていると思います。国内のアドネットワークは最近元気がないですが、まだ使えるのかどうか、というのをストレートにお聞きしたいです。

三浦:これはあまり公の場で言いたくはないのですが、nendさんはうちの出稿媒体のポートフォリオでいうと主力なのです。たとえば、あるケースではリリースから4ヵ月目とかのタイミングでTVCMもやっていない時期でも、nendさんのところをいかに伸ばすかを考えて色々やっていたら、ひと月で5,000万円くらいのボリュームが出ました。

アド以外のプロモーションをほぼやっていない状態でそれくらいですし、TVCMをやったときも同じく4,000~5,000万くらい出したりしています。毎月かなりの額を出稿させていただいていますが、はっきり言ってそんなに効果が出ると思っていない会社さんもあると思います。なぜ伸びるのか、という話はこの後ありますが、「まだ使える」どころか主力として出稿させていただいています。

二宮:言える範囲で具体的にどういうことを意識しているのか、ネットワークに配信するときの、マーケティングにおける観点で教えてください。

三浦:一番よくやっているのは、配信面をとにかく見るということですね。たとえば、このタイトルであればゲーム攻略面が良いのか5ちゃんなのか、ゲーム攻略面で来たユーザーは本当にLTVが高いのか、逆にそうでない面から来ると高いのか。ほかには3Dを中心にしたゲームと、2D中心のゲームでは効果の出る面が全然違ったりということもあります。

アドネットワークでは配信面がいろいろ出てきますけど、クリエイティブ毎に取りやすい配信面は相当違います。それらを見たときに、ユーザーがどういう視聴態度でいるか、どういう要素があればタップするか、そもそも始めたいと思うか、その時にストアの内容とずれていないかどうか、ずれているならそれがボトルネックになっていないか、などのいろいろな要素があります。

こうした配信面とクリエイティブの仮説から、ユーザーのインサイトをこちらで想像して、マーケティングの方針そのものをアドネットワークから決めるぐらいの使い方をしています。

二宮:どの媒体に出ているかというインプレッションから、CTR、CVRから、そのあとの課金まで、出ている面を見ながら次の仮説を立てていくということまでやっているのですね。

三浦:そうですね。面白かった例では、課金ユーザーのリターゲティング配信です。

正直なところリターゲティング配信そのものに期待しているというのではないです。課金ユーザーにリタゲ配信をすると、どの面でインプレッションが出るかが見られますよね。「これは若年層がやっているゲームだから、30代のお金使いたい人はやらないゲームだよね」というような都市伝説が、運用しているとよくあるのですが、そこでリタゲをやってみようと。

累計課金何千円以上とかでターゲット配信してみると、5ちゃんブラウザがめちゃくちゃ出てくるという。「10~20代がやるゲームで、そんなに5ちゃんブラウザ見ますっけ」みたいな。するとこれはターゲティングを大きく変えたら、まだまだ伸ばす余地があるのではないかというのが見えてきます。

去年にnendさん中心にやらせていただいた『神式一閃 カムライトライブ』というタイトルでは、広告運用を抜本的に見直した結果、出稿額が前月比で2.5倍くらい伸びました。たしか、そのうちの半分くらいがnendさんへの出稿だったと思います。あれも、配信面とクリエイティブの仮説を掘っていったら突破口が見えてきて、集中特化したらボリュームが2~3倍、ROASで1.5~2倍ほどに改善したりして、やれば伸びるなという感覚でいます。

二宮:ネットワークで使ったクリエイティブが、TVCMを打つときの参考にもなったという話も御社から聞いたことがあります。そういうのは一連の流れでやられているのですか。

三浦:そうですね。ユーザーに寄り添うマーケティングというのはそこかなと思っています。

うちのユーザーさんはこういう配信面を見ている。もちろんTwitterなどの広告も含めてですけど、こういうWEBサイトを見ている人がこの広告を見たらどう思うか、このCMを見たらどう思うか、配信面からユーザー像を考えたときに、この時間帯にCMを流すのは適切なのかとか……そういったことを考えます。そこが分断されてしまうと効率が落ちてしまいます。

【グループワークの様子】

▲B会場では、グループワークを通じた実践的な内容を展開。テーマは「データを活用するうえでの運用上の課題」について。短い時間ではありましたが、各テーブルで様々なディスカッションが行われました。
 

■データの活用に“原点回帰”する

二宮:時間的にも、まとめに入っていきたいと思います。ここまでお話をしていただいていましたが、簡単に言うと“原点回帰”をしていかないといけないということですね。

マーケターの皆さんもかなり忙しかったり、正しいデータかどうかの検証に時間を取られたりで、取り組む時間がなくなってしまうことがあると思います。

しかし、今日のお話のなかでもアプリボットさんがマーケティングコンセプトであえて当たり前のことを意識してやられているというお話もありました。今の時代、アドフラウドの問題など、様々なことが複雑に絡み合っている状況ですので、結果と同じくらいプロセスが重要になってきています。

先ほど三浦さんが仰っていたように、データの裏にあるものを洞察して、仮説検証していくといったことが、当たり前のことかもしれませんが大切です。まとめのキーワードとしては原点回帰ということだと思います。

データの活用は、今日のお話を聞いてもアプリボットさんはかなりやっていらっしゃるという印象がありますし、Adjustさんもそれをサポートしてくれるような機能がたくさんあると思います。環境は昔よりもそろってきているので、ぜひ皆さんも原点回帰して、データ活用を取り組んでもらえればと思います。

お時間となりましたので、これでセッションは終了とさせていただきます。ありがとうございました。

 

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