【×Marketing】vol.6
『PUBG MOBILE』が目指すe-sports市場の成長。バトルロイヤル系の大衆化を背景に、マーケティング施策ではなにを講じたのか

日本のゲームアプリ市場において、バトルロイヤル系が席巻して久しいですが、同ジャンルの代表格といえば『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(以下、PUBG)』です。PC版で大きな成功を収めた同作は、その後Tencent社とモバイル版(『PUBG MOBILE』)を開発。全世界でリリースされたモバイル版は、売上20億ドル以上(独自調査より)を記録するまでに成長。

バトルロイヤル系は、主に最大100人のプレイヤーが、マップ内にある装備などを駆使して “最後の1人”になるまで生き抜くゲームジャンルです。プレイヤーは段々狭くなる安全地帯内で、ランダムに配置されている武器や車両、装備アイテムを駆使して生存競争に臨んでいきます。

バトルロイヤル系の草分け的存在である『PUBG』では、最後の1人まで生き残ったプレイヤーの画面に「勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!!」というメッセージが表示され、プレイヤーはこの通称「ドン勝」を目指して戦っています。

本稿では、『PUBG MOBILE』のマーケティング施策を中心に、e-sportsの取り組みなど、さまざまな切り口でお話をうかがいました。

PUBG TOKYO KRAFTON GAME UNION
Mobile JP Biz Dept / Leader
田中 隆一 氏(写真左)

Marketing Team
文 基範 氏(写真右)

[Topics]
■バトルロイヤル系はなぜ日本で流行ったのか
■“PUBGらしさ”を整えバイラル効果を狙う
■e-sports市場全体をけん引するために

 

バトルロイヤル系はなぜ日本で流行ったのか

――本日はよろしくお願いします。『PUBG MOBILE』は全世界で配信されているゲームタイトルです。日本支社では、どのような事業・業務内容を担っているのでしょうか。

田中:日本版のゲーム運営やマーケティングが主業務です。日本のユーザーに支持していただけるように、ゲーム内のコラボ施策から大会の企画運営、広告クリエイティブに至るまで、『PUBG』シリーズに関するすべての内容を担っています。
 

――部署はPC版とモバイル版で分かれているのでしょうか。

田中:はい。PC版とモバイル版では、やはりユーザー層が異なります。当然、ふたつとも遊んでいるユーザーもおりますが、こと販売戦略においてはそれぞれ個別の施策を考えて、アクションしています。
  

――『PUBG MOBILE』ではどのようなユーザーが遊んでいるのでしょうか。

田中:本作は全世界で10億ダウンロードを突破しているため、正直なところ幅広い層のユーザーが遊んでいます。ただ日本に関しては、比較的若い層、いわゆるM1層(20歳~34歳の男性)、F1層(20歳~34歳の女性)がメインとなります。

また、この手のゲームジャンルでは、女性比率もやや高いのが特徴です。ゲーム実況でも題材にしていただいており、YouTubeやMildom、Mirrativでも女性の配信者さんを多く見かけます。
  

――いまではバトルロイヤル系のゲームジャンルは大衆化してきました。一般的に(バトルロイヤル系含む)シューティングゲームは、ややニッチなジャンルとして一部のコアユーザーが好む傾向がありました。PC版から早くにバトルロイヤル系を打ち出し、日本でも大ヒットを飛ばした『PUBG』シリーズですが、みなさんはこのジャンルの急成長をどのように見ていますか。

田中:ここまでの成長を遂げたのは予想外でした。これは我々の代表はもちろん、現地の開発陣も同じことをお話していると聞き及んでいます。

ほかのゲームジャンルと大きく異なるのは、コンセプトがシンプルかつ自由であることが挙げられます。目的はただひとつで、「フィールド上にあるアイテムを用いて最後まで生き残ること」。あとはプレイヤーが自由に考えて行動するため、毎回決まった展開、結末にならず、一瞬一瞬のゲームシーンを堪能できるのが特徴です。

なかには、この自由度の高さをネックに思う方もいらっしゃいますが、昨今はユーザーのゲームに対するリテラシーも日に日に上がってきており、新しい体験を求めている土壌と、このバトルロイヤル系というゲームジャンルが合致したのではないかと考えています。

:バトルロイヤル系は、一見敷居が高いゲームジャンルと思われがちですが、実際に遊んでみると、他者との駆け引きや共闘などで、ただ生き残ること以外のシーンでも魅力に感じるところが多々あります。仲間内でローカル(またはオンライン)プレイするなど、コミュニケーションツールのひとつとしても一役買い、こうした背景も若い層に支持される点のひとつとして挙げられるかもしれません。
  

――『PUBG MOBILE』は、2018年5月にリリースされました。マーケティングに関しては、どのようなコンセプトを据えて展開されたのでしょうか。

田中:世界的ヒットタイトルのモバイル版を日本で展開するにあたって、大変なプレッシャーもありましたが、ゲーム自体の完成度は優れているので、とにかく多くの人に知ってもらうための施策を矢継ぎ早に展開していきました。

たとえば、リリース早々には、TVCMを放映したり、渋谷・新宿の交通広告を展開したりと、大々的に打ち出しました。

また、認知度を上げるだけで終始せず、実施した施策・クリエイティブがどのように届いているのかを追加リサーチも行っています。リサーチを通して、本作のどの部分に興味・魅力に思ってくれたかを把握したうえで、さらにピンポイントで掘り下げることを繰り返しています。一過性の流入では意味がなく、これから5年、10年と運営を続けていくことを考えたときに、『PUBG』シリーズという文化をブランディングするまでが、マーケティングの役割だと思っています。
  

――『PUBG MOBILE』は2021年5月で3周年を迎えましたが、マーケティングの取り組みに変化は出てきましたか。

:コンセプト自体は変わりませんが、ユーザーがゲームの体験を通じて得られた要素をきちんと我々のほうでも抽出して、それらをコンテンツに落とし込むように心がけています。マス向けの施策も重要ですが、ゲームの体験にこそ本質的なものが含まれているので、毎回原点に立ち返るようにマーケティング施策を日々企画・検討しています。
  

“PUBGらしさ”を整えバイラル効果を狙う

――昨今、さまざまなバトルロイヤル系タイトルがリリースされています。なかでも『PUBG』シリーズは、一大ムーブメントを巻き起こした立役者でもあります。同シリーズには、「ドン勝」やフライパンなど、“PUBGらしさ”を表す象徴的なアイコン(キャッチ)があるかと思います。マーケティング施策やクリエイティブを考えるうえで、こうした“PUBGらしさ”も意識されているのでしょうか。

:そうですね。国内のみならず、全社的に『PUBG』ブランドを意識した打ち出し方を考えています。広告クリエイティブをはじめ、お知らせバナーやちょっとしたアイコンなどの細部に至るまで、全世界で心がけていることです。
  

――『PUBG MOBILE』のマーケティングにおいて、これまで印象的だったこと、または成功事例などがありましたら教えてください。

:2周年直前の施策は思い出深いです。この時期には、『PUBG MOBILE』の公式アンバサダーにアーティストのGACKTさんを起用しました。GACKTさんご自身もシリーズファンであり、またその相性からユーザーからの反響も大きなものがありました。


▲GACKTさんのスキン

 

:一定の話題につながるだろうと、SNS上におけるバイラル(口コミ)効果も見込んでいましたが、きちんと流入にもつながり、まさに功を奏しました。マーケティングは、公式側からメッセージを広めていくこともありますが、やはりユーザーが自主的に友人に勧めるなど、バイラルを起こしやすい座組を考えることも重要です。

また、コロナ禍で巣ごもり需要がトレンドになるなかで、実際のゲーム内に“安全地帯”という名称があるのですが、それをモチーフにして「こんな時だからこそ自宅という”安全地帯”にいませんか?」というメッセージを投稿したりStay Homeを促すようなプロモーションキャンペーンもTwitterで実施しました。

 

――一般的にコラボはアニメIPなどが中心ですが、芸能人のボイスやスキンを採用するのはユニークですね。それがきちんとゲームの面白さにも直結しています。ちなみに『PUBG』シリーズのマネタイズは、スキンの購入などが主でしょうか。

田中:はい。本作はゲームバランスを最重視しており、いわゆるPay to Winではありません。本作では、ファッションやボイス、乗り物など、自分のアバターを個性的に彩りたい人向けに商品を販売しています。なかでもボイスは人気ですが、ほかの商品も同じくらい人気があります。
  

――昨今のゲームアプリ市場において、スキンなどの商品販売でマネタイズを成立させるのはなかなか骨が折れることです。ユーザーが購入する背景には、自己表現やコミュニケーションツールとしてのきっかけ作りが影響しているのでしょうか。

田中:そうかもしれません。ひと昔前のPC向けMMORPGが、まさにこうしたマネタイズだったと思います。装備品のステータスに影響せず、純粋にビジュアルだけの変化を楽しむ。プラットフォームやゲームジャンルは違えど、本作のようなマネタイズが受け入れられる時代になってきたのでしょう。
  

――『PUBG MOBILE』では、これまでさまざまなコラボ施策を展開してきました。なにか意識している点はありますか。

田中:大切なIPをお借りしているので、先方の世界観を丁寧に再現する一方で、『PUBG』シリーズらしさも意識して取り入れています。また、これまでは芸能人などの実写関連とのコラボ施策がやや多めでしたが、今後はアニメ作品も積極的に取り入れて行ければと考えています。
  

――基本的なアップデートやゲーム仕様は世界共通ですが、コラボやキャンペーンなどに関しては日本独自という形でしょうか。

田中:概ねそうですね。そもそもボイスカードは海外にはありませんので、日本独自の商品となります。一部の国では少し出ていますが、日本のように著名な声優さんを起用して、コンスタントに商品化するケースは国内だけですね。

日本は本当に特殊な市場で、グローバル戦略が通じない国のひとつです。とはいえ、ゲームアプリ市場としては世界第3位の規模を持つため、闇雲にグローバル戦略をあてていくのも無謀です。日本ユーザー向けに戦略や施策を考えるのが、我々日本チームの役目です。

 

e-sports市場全体をけん引するために

――『PUBG』シリーズは、多種多様な大会を開催しています。いわゆるe-sports施策に関しては、どのような見方をされていますか。

田中:タイトルのブランディングや継続率、流入などのKPIに対する影響もそうですが、それ以上にe-sports市場を我々の取り組みで成長させるところまでを考える必要があると思っています。「自社タイトルだけが活性化すればいい」というだけではなく、e-sports市場、ひいてはゲーム市場全体の活気につなげるための施策というふうに捉えるということです。
  

――e-sports市場の成長をけん引する存在になると。

田中:はい。おかげさまで『PUBG MOBILE』は、その競技性の高さからe-sportsと親和性のあるタイトルとして注目されています。それらを活かすために、定期的に大会を開催したり、NTTドコモさんと「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE(PMJL)」というプロリーグを設立したりと、e-sportsに関するさまざまな取り組みを仕掛けています。なかでも「PMJL」は、賞金総額が年間3億円という国内でも例のない規模になっています。
  

――大規模ですね。e-sports市場の成長のために必要なものはなんでしょうか。

田中:さまざまなものがありますが、ひとつはe-sportsという文化を企業様に理解してもらうことだと思います。実際問題、大会の運営にはスポンサーや協力企業なくしては、開催自体が難しいです。そこで弊社では、『PUBG MOBILE』の企業対抗戦を開催し、実際にe-sports市場を見てもらうだけではなく、体験・参加してもらうことをアプローチしました。

もちろん、それ以外にも企業の知名度や利益につながるメリットも伝えております。……ただ、正直なところ、すぐには利益にはなりません。ですが、今後のゲーム業界のためにも必要なアクションであり、きちんとリターンが来るように我々も善処するだけです。

その渦の中心には必ず我々がいますし、船頭に立って盛り上げていかなければなりません。こうした草の根活動を通して、現在の定期的な大会開催やプロリーグ設立につながったと考えています。
  

――チーム内でもこの思想が共通認識としてあるかと思います。

田中:そうですね。あとは当然、最終的には参加ユーザーや観覧者が満足する取り組みをしなければなりません。野球やサッカーなど、プロスポーツを踏襲できるように、そして同じくらいの盛り上がり、社会的認知に到達することをいま尽力しています。

:大会運営を通したe-sports事業は、『PUBG MOBILE』、ひいてはゲーム人口の拡大にもつながります。施策ひとつひとつを綿密に取り込むこともいいですが、もう少し広義的な意味でe-sports事業を推し進めることも必要だと考えます。

田中:マイナースポーツが一気にメジャーに駆け上がる瞬間は、大きな成績を収めたときです。最近ではラグビー、その前は女子サッカーなどが該当すると思います。e-sportsでも同じことが言えて、観戦者が「この人たちすごい!」と思ってもらえるような、座組やスター選手の輩出を行っていかなければなりません。
  

――大会参加者・選手の存在も必要不可欠ですが、オーディエンスの盛り上がりを通じて、タイトルのバイラル効果にもつながると思います。定性的な情報でも構いませんので、これらの効果につなげるために配慮するべきポイントを教えてください。

田中:まず前提として、お客様が段階的にe-sportsに興味関心を抱ける座組が必要です。たとえば、幾つもの大会を一斉に始めたとしても「なんか大会やっていたみたいだね…」というリアクション程度で、あまりお客様のなかでも印象に残らないと思います。だからこそ、ステップを踏むごとにきちんと山を作る必要があります。

そのために最初は「PMJL」を始動して、プロ選手を輩出しました。注目度や大会の参加者を増やすために、破格な賞金設定にもこだわりました。正直、参加するきっかけも賞金目当てでもいいと思っています。そして、そのプロリーグを目指す準プロが該当するリーグを作り、さらにその手前には大会の雰囲気を感じられたり、自分の腕前を試せたりと、カジュアルなイベントの催しを準備しています。
  

――なるほど。いきなり高尚な大会を開催するのではなく、観戦者→試しに大会参加→準プロリーグ→プロリーグという最終的にピラミッド型のようなモデルを考えているということですね。

:はい。実際に体験する方が増えれば、ゲームユーザーのレベルも上がり、『PUBG MOBILE』の活性化にもつながります。一方で、大会の観戦を専門として楽しむ方も多くいらっしゃいます。なので、観戦だけを楽しみたいというお客様のニーズにも応えるように、配信技術や演出、視覚的な見やすさ、楽しさも同時に提供する必要があります。

田中:まだまだ構想段階ですし、もしかすると実行した際には、お客様と我々の温度差が異なる可能性もあります。これまで運営してきた3年間では、さまざまな課題が見えてきましたので、4年目はこれまで得た経験を活かして、ゲーム内外の取り組みは加速化していきます。
  

――それでは、最後に読者へメッセージをお願いします。

:先ほども申し上げましたが、マーケティングでは原点に立ち返ってコンテンツを訴求できればと考えています。直近では、3周年施策に関してその思想を込めました。

手前味噌ではありますが、『PUBG MOBILE』はひとつのコミュニケーションツールとしても機能しており、本作をきっかけに出会いがあったり、久しく会ってない人とゲームを通じて交流できたりと、改めて人と繋ぐツールなのだと感じています。今後もこれらの思想が伝わるようなマーケティング施策を計画してまいります。

田中:『PUBG MOBILE』は本当に素晴らしいタイトルですが、まだまだその良さをすべて伝えきれていませんので、今後も声を大にして「PUBGは面白い!」と多くの方に訴求できればと思います。

一方で、ときにはゲームの問題・課題などでお客様にご迷惑をおかけすることもありますので、これらもきちんと是正できるよう努めていきます。良いところは伸ばし、悪いところは解消することがお客様の満足度につながります。お客様の「体験」の妨げにならないことはもちろん、「最高の体験」を提供できるようにこれからも邁進していきます。
  

――本日はありがとうございました。



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