アプリビジネスをスケールさせる“真のマーケティング”に必要な視点とは【SESSION3-A #1】

(左から本田商事株式会社の豊野氏、株式会社ディー・エヌ・エーの川口氏、株式会社Yostarの李氏、株式会社アドウェイズの山田氏)

2019年4月16日、東京・新宿にて国内最大級のアプリマーケティングイベント「Next Marketing Summit 2019」が開催。

第3回目の今回は、3会場同時進行にて過去最多の14セッションを実施。スマートフォンゲームをはじめ、ニュース、マッチング、ファッションなど多様なジャンルのキーマンが熱いディスカッションを繰り広げました。

本稿ではA会場で行われた「アプリビジネスをスケールさせる“真のマーケティング”に必要な視点とは」の様子を紹介。登壇者は、株式会社ディー・エヌ・エーの川口隆史氏、株式会社Yostarの李衡達氏、株式会社アドウェイズの山田翔氏の3名が揃い、モデレーターは本田商事株式会社の豊野桂太氏が務めました。

【登壇者情報】
<スピーカー>
川口 隆史 – Takashi Kawaguchi

株式会社ディー・エヌ・エー
マーケティング部
デジタルマーケティンググループ グループマネージャー

2009年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社。2012年からマーケティング領域に従事し、Mobageの会員獲得目的の広告出稿担当、アプリマーケティングの立ち上げ担当、様々なゲーム/エンタメアプリのデジタルマーケティング担当を経て、2016年よりゲーム領域のデジタルマーケティング責任者に。

李 衡達 – Koutatsu Ri

株式会社Yostar
代表取締役社長

スマホゲームアプリ『アズールレーン』の日本におけるローカライズ・マーケティング施策を担当。

山田 翔 – Sho Yamada

株式会社アドウェイズ
取締役 新規領域担当

2007年アドウェイズに入社後、新規メディアの立ち上げを担当。その後、スマートフォン向け広告配信サービス「AppDriver」など新規サービスの立ち上げに貢献する。2014年4月にアドウェイズ執行役員、2016年1月に上席執行役員に就任後、2016年6月より取締役に就任。現在では新規事業や投資事業を管掌する取締役を務めながら、Bulbitではアプリデベロッパー向けの全自動マーケティングプラットフォーム「UNICORN」のプロデューサーとして活動。

<モデレーター>
豊野 桂太 – Keita Toyono

本田商事株式会社
代表取締役社長

総合広告代理店、出版社、ネット専業代理店を経て、ボルスト株式会社設立。2018年株式会社フリークアウトに入社。2019年1月より、アプリビジネス特化型専門商社「本田商事株式会社」を設立し、代表取締役に就任。フリークアウトグループのグローバルアプリ事業を統括する。アプリマーケティング領域において、数々のセミナー登壇やメディアに取り上げられ、複数社の顧問やアドバイザーも務める。趣味で年間1,000店舗以上飲食店を食べ歩き、アプリ業界のグルメアドバイザー『トヨログ』としての顔も持つ。
 

■「アプリマーケティングは本当に必要なのか?」

豊野:今回のテーマが、「真のマーケティング」であることを山田さんから聞いたときは、難しいテーマだなと思いました。遠慮なく突っ込んでお話を聞いていきますので、ぜひ、みなさんの本音を聞かせてください。

自己紹介はしないでほしいと言われたのですが、山田さんが入れようということなので勝手に自己紹介から始めますね(笑)。本田商事株式会社の豊野です。“トヨログ”の愛称で呼ばれることが多いので、グルメの仕事をしていると思われている方が多いと思いますが、アプリやマーケティングの仕事でご飯を食べさせてもらってます(笑)。

川口:DeNAの川口です。2012年から約7年ほどデジタルマーケティングを担当しています。今回のテーマが「真のマーケティング」ということですが、これまでずっとデジタルマーケティングに携わってきた立場から、デジタルにおいて感じた課題や今後の展望についてお話していきたいと思います。

:株式会社Yostarの李です。私は、どちらかと言えばバックオフィスの人間なので、マーケティングにそこまで携わっていませんが、『アズールレーン』をリリースした2017年頃は、マーケティングを含め、あらゆる業務をひとりでこなしていました。そのときの経験談を通じて、今回はマーケティングについてお話したいと思います。

山田:株式会社アドウェイズの山田です。今はアドウェイズ子会社のBulbitで、「UNICORN」というサービスを展開しています。アプリ向けの全自動マーケティングプラットフォームとして、広告のクリエイティブとCPIを運用してくれるプロダクトを進めています。今回はクライアント、マーケター、アプリ事業者と色々なポジションに分かれているので、様々な視点からお話していただきたいと思います。

豊野:ちなみに山田さん、今回はなぜこの人選にしたんですか?

山田:「UNICORN」は多くのクライアントさんにご利用いただいていますが、特に良い事例を出していただいたのがYostarの李さんです。『アズールレーン』の事例を取り上げつつ、マーケティングについて考えていければなと思い最初に選ばせていただきました。その上で、もう少し面白くしたいと思ったので豊野さんにお声がけして、笑いに行き過ぎないよう、真面目なところを担当してもらえる方をということで最後に川口さんにお声がけさせていただきました。

豊野:では早速ですが、今回は4つのテーマを用意しています。まず、会場の皆さんにお聞きしたいのですが、マーケティングのお仕事をされている方はどれくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

豊野:半分くらいですね。現在、デジタルマーケターは日本に約2万人いるそうです。まずはひとつ目のテーマですが、以前から僕が考えていた「アプリマーケティングは本当に必要なのか?」をズバリ聞いてみたいと思います。

山田:マーケティングにお金をかけることが、良いのか悪いのかという点も考える必要はありますが、良いものであれば流行っていくというケースもあると思います。特に、Yostarさんの『アズールレーン』は中国産のIPで、広告を出したいと相談を受けたときは、日本でまだ知られていませんでした。僕自身も、それほどユーザーを獲得できる気はしていませんでした。

ですが、結果的には派手にマーケティングしたおかげもあり、SNSでも話題になって十分な認知度が取れましたし、一躍ヒットアプリになりました。どんなに良いものでも、知られないことには加速していかないので、知ってもらうためにお金をかけたり、施策をするのは必要なことです。

豊野:川口さんは今のお話を受けてみていかがですか?

川口:同意見ですね。以前よりも、Twitterなどで個人が情報発信をするようになったおかげで、良いものが広がりやすい状況になっていると感じます。

実際、弊社のタイトルでもすでに遊んでくださっているプレイヤーが自主的にタイトルの紹介をツイートをしてくれたことが何回かあり、そのタイミングでダウンロード数が目に見えて伸びたりしました。

とはいえ、なかなかコントロールすることは難しく、またそれだけで何百万ダウンロードの大ヒットまで持っていくのも難しいと感じています。なので、せっかく作ったゲームをしっかり届けていくためにはマーケティングをしっかり考えていくことは当然必要だと思っています。

豊野:李さんはいかがですか?

:自分の場合は、川口さんとは少し意見が変わります。お恥ずかしい話ですが、『アズールレーン』がリリースされる当初は会社の死活問題でした。残された弾がそれしかなく、ローンチで力を入れないと、会社の存亡自体が危うい状態だったのです。本当に日本で通用するかも分からない状態でしたが、ローンチして大体2、3日のゲーム内のデータや、KPIを掘り返してみたところ、これは通用すると分かったので、さらにマーケティング費用を投入しました。

豊野:マーケティングに関する最初の相談は山田さんにしたのですか?

山田:スタートの段階から依頼を受けています。リリース当初の目標CPIは600円でお願いされていましたが、実際キャンペーンを開始してみると初速の勢いがすごく良く、課金もついてきて当初目標としていた初月ROAS50%を優に越えるような勢いだったので、ROASに合わせる形でCPIをどんどん引き上げて獲得量を最大化させていった結果、最終的にはCPIが2,500円にまで引き上がっていました。このROASを維持しつつ獲得量を最大化させるためにCPIを上げ続ける手法をリリース時点から取り入れる会社はほとんどない気がしています。

Yostarさんは初期にそれだけのコストをかけたからこそ、結果的に広告の露出度が増え、さらにTwitterでユーザーとの接触回数を増やしたことで、「アズレンは流行ってる」という認識を得られたんだと思います。なので、CPIを抑えて出来るだけ低い単価でユーザーを獲得したいと考えるよりかは、マーケティングの本来の目的である、ビジネスを大きくしていくことにフォーカスし柔軟な戦略をとることが大事なんだと気付かされました。

豊野:最初は李さんがマーケティングを見ていたんですか?

:そうですね。当初は人がいなかったですし、一応前職でデジタルマーケティングに触れたこともあったので、ワンマンの会社ですし、自分でやっちゃいました。

豊野:結果論でも構いませんので、『アズールレーン』のアプリマーケティングが成功したポイントはどこだと考えていますか?

:昨今のゲームアプリ事情も踏まえると、なかなか新しいタイトルが出てこないですし、出てきても長く続かないことが多いように思います。なので、ローンチのタイミングでの勝負に出るかどうかが大きいと思います。ローンチで大きくプロモーションを打ち出せないと、2~3ヵ月後からユーザー流出や失速感が強くなります。なので、最初の3ヵ月が要だったと感じます。

豊野:李さんは代表だからこそ、ご自身の判断でアクセルを踏めたというのはありますよね。経営層に説得し、マーケティング予算を取りに行く立場の川口さんは、ローンチ初動のかけ方に関する予算の決め方であったり、逆に予算が無いときにどうするのですか?

川口:先ほど自己紹介のスライドに乗せていた『メギド72』と『逆転オセロニア』は、『アズールレーン』とはまったく逆で、リリース初期はそこまで大規模にプロモーションをしていません。この2タイトルは、もっとゲームをよくできる余地があったので、ブラッシュアップを優先しました。

『逆転オセロニア』は、1年後ぐらいにTVCMを打ち出して、そのタイミングからプロモーションに踏み込んでいきました。最初から流行っている雰囲気を出すのも重要ですが、そのときに完璧な状態でなかった場合、そこで離脱してしまったプレイヤーはなかなか戻ってきていただけない印象があります。なので、タイトルのコンディションとのバランスも見た方がいいと思います。

豊野:『アズールレーン』は、初動ではあまりトラブルは無かったんでしたっけ? かなり良い勢いで初速を踏んだように思いますが。

:ローンチ時にありがちなサーバーダウンは無かったですね。ですが、予想以上の反響があったこともあり、サーバー不足が後々問題になりました。1回目は、ユーザーからも許されて……それもこちらが勝手にそう思っていたという感じですが、さすがに翌日もう一回大規模なサーバー障害起こすと、我々運営としても納得できない部分もあり、サーバーを一時停止しました。そこから復旧するまで、ユーザーにしっかりとTwitterなどで報告をしながら作業を進めていきました。

初速が良かったとは言え、中国の会社が配信するタイトルということで、どうしてもマイナスイメージはあったと思います。ですが、そういう施策によってマイナスイメージを払拭でき、そこからもう一回火がついたことで現在に繋がっています。「アプリマーケティングは本当に必要なの?」という問いに対しては、お金のかからない施策も考えてみるべきではないかと思います。

山田:当時のTwitterでは、「中国企業なのに神対応!」といった形でいわゆるギャップ萌えのような反応が多かったですよね。そういったユーザーがストアにもレビューを投稿することでストアでの評価も良くなり、周りの人がやっているから自分もやってみようという連鎖に繋がった。それによって、広告経由の流入も良くなったのではないかと感じています。


 

■「ROASやCPIは悪なんですか?」

豊野:そこは大事ですよね。海外のゲームだから、日本のゲームのように対応してくれないんじゃないかという印象を、マーケティングで変えてしまう。ですが、これは逆もしかりですね。事前に期待させすぎたことで、ユーザーの期待に中身が付いてこないこともあります。そういう意味では、タイトルに合わせた適材適所なアプリマーケが必要ということですね。

ここで次の質問なのですが「ROASやCPIは悪なんですか?」。これについてはいかがでしょうか。

川口:僕らデジタルマーケティング担当がやっている仕事では、そういう数値をかなりしっかり見ることで効果改善をしているので、当然悪ではないと思っています。ただ、自分も一時期は陥っていましたが、デジタルマーケティングは数字がはっきりと見える分、数字だけを見てしまい、その結果を生み出しているユーザー心理や感情まで目がいきづらいケースが多いです。ユーザー心理という原因をしっかり意識しながら数字という結果を見ることが重要だと思っています。

山田:僕等は「UNICORN」というサービス自体が、広告に興味があるユーザーに自動的に配信を寄せていくことでCPIをターゲット通りに合わせて、結果的にROASもよくしていくといったことを実現できるプラットフォームなので、こういった数字を追うのは大事なことだと思っています。ですが、他のサービスやプラットフォームを見ていると、見かけ上のCPIを安く見せるとか、コンバージョンの起点になるエンゲージメントをストアへのクリック以外のものを織り交ぜていくことで、横並びでCPIを比較できない状態がここ数年で増えてきていると感じています。なので、レポート上にある同じ項目の数字が、全てのプラットフォームにおいて同じだと判断してしまうと正確な判断ができなくなってしまいます。

本来、CPIというのは使った広告費に対して、何件コンバージョンが取れたかというところから算出されるべきなのですが、実はこのコンバージョンのカウントの仕方が多様化してきているのです。本来は広告をクリックしたことを起点としてコンバージョンを計測していたのですが、広告を見たことを起点とするコンバージョンだったり、動画を見たことを起点とするコンバージョンなどが存在しているなかで、それらすべてを同一のコンバージョンとして評価してしまうのが、今はよくある話になってしまっています。

それぞれの広告エンゲージメントの影響力が大きく違うのにも関わらず、広告をクリックしたことと同じ影響度で評価してしまうことで、実はビジネス自体は伸びていないのに、広告費だけを使い込んでいることになってしまっていることも少なくはありません。そうならないように僕らから啓蒙するよう、意識することも大事だと思います。

豊野:どこも数千万円、数億円かけるというと、さすがにそこは見てるのではないかと思いますけど、傍から見てると、そこまで見れていないことが多いのでしょうか。『アズールレーン』は初動で大きく予算を使っていましたがいかがですか?

:広告やマーケティングは、昔からセンスが問われるもので、それは今も変わらないと思っています。ROASやCPIは、あくまでデジタルマーケティングの指標のひとつとして捉えるものであって、それだけで良し悪しは語れません。少なくとも、なぜROASやCPIがその数値になっているのか、諸々の施策の背後とロジックを理解しながら見たほうが良いと思います。

豊野:数字だけで語られて、その背景をしっかりと見ていないと。代理店でもそうですね。データを見ながら一緒になって考えたり、出せる情報と出せない情報はあるかもしれないですが、ここを共有できているかどうかという問題は結構あると思います。

川口:代理店さんとの話は数字の話になりがちではあります。

豊野:まあ、みなさん売り上げほしいですからね(笑)。表面的な数字が良ければ、予算ください、みたいな(笑)。

川口:それはそうですね(笑)。代理店さんは多くの案件を持っていたりするので、個別のアプリのユーザー理解まで及びづらいと思うので、そこは僕らが理解して代理店さんにしっかりと伝えていく必要はあるでしょうね。

豊野:ROASやCPIという言葉が、この業界で当たり前になっていますが、他の業界だとそんなに気にしていなかったりしますよね。アプリマーケティングは、スタートがデジタルマーケティングから入ったので、そこが当たり前になっている。ですが、周りに聞くと、アプリゲームのマーケティングも、徐々にコンシューマーゲームのマーケティングの考え方になってきていると。数字だけで語るよりは、よりエモーショナルな視点を持っていかないといけないなと思います。

たとえば、バナーは、CTRやCVRばかりが重視されますよね。それがユーザーにちゃんと届いているのかどうかはまた別なのに、ビューの計測が発達してきたことが、逆に悪さを助長することもある。テクノロジーが、数字を見ることにおかしな方向へ進化してしまっている。数値だけを見るのではなく、様々な指標と合わせても見ていく分にはROASやCPIも決して悪ではないという形でまとめておきましょう。

(続きは下記よりご覧ください)

 

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