インハウスマーケターが語る!マーケティングから広げるアプリ成長サイクル【SESSION4-A #2】

(左からユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社の佐藤氏、ココネ株式会社の栗原氏、株式会社ブシロードの森下氏、エヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社の髙岡氏、株式会社ミクシィの松尾氏)

2019年4月16日、東京・新宿にて国内最大級のアプリマーケティングイベント「Next Marketing Summit 2019」が開催。

第3回目の今回は、3会場同時進行にて過去最多の14セッションを実施。スマートフォンゲームをはじめ、ニュース、マッチング、ファッションなど多様なジャンルのキーマンが熱いディスカッションを繰り広げました。

本稿ではA会場で行われた「インハウスマーケターが語る!マーケティングから広げるアプリ成長サイクル」の様子を紹介。登壇者は、ココネ株式会社の栗原孝明氏、株式会社ブシロードの森下明氏、エヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社の髙岡幸一氏、株式会社ミクシィの松尾雄司氏の4名が揃い、モデレーターはユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社の佐藤愛氏が務めました。

(前半の記事は下記よりご覧ください)

【登壇者情報】
<スピーカー>
栗原 孝明 – Takaaki Kurihara
ココネ株式会社 マーケティング室 室長

森下 明 – Akira Morishita
株式会社ブシロード
広報宣伝部デジタルマーケティングチーム チームリーダー

髙岡 幸一 – Koichi Takaoka
エヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社
ゲーム事業部 プロデューサー

松尾 雄司 – Yuuji Matsuo
株式会社ミクシィ デジタルマーケティング室 室長

<モデレーター>
佐藤 愛 – Ai Sato
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社
Unity Ads Account Manager
 

■結局、インハウスはやるべきか否か

佐藤:インハウスマーケターとして今後チャレンジしていきたいことを教えていただけますか? 合わせて、最終的にインハウスはやるべきなのか否か、お一人ずつお伺いできればと思います。

髙岡:限られた媒体で運用していますが、新しい媒体にも積極的に挑戦していきたいと思っています。あとは、新規ユーザーの獲得が難しくなってきている今、ゲーム内の施策と連携してリエンゲージメントを重視する必要があります。そこは、プロダクトサイドと連携し強化していきたと考えています。

インハウスについては、一度は挑戦してみるべきだと思います。チャレンジすることで気付けることがありますし、そこで気付いたことを、代理店様運用にも反映させることも良いと思います。ただ、全ての広告費をいきなりインハウスに移行するのは非常にリスキーです。まずは少額でスタートして、上手くいったらスケールさせていく方が良いと思います。

松尾:インハウスでやるのか、代理店様に依頼するかという選択肢は、手段のひとつでしかなく、重要なのはそこではありません。弊社の場合は、インハウスでやってきたメニューが、どうしても頭打ちになることがあり、その際はクリエイティブを含めて代理店様にお願いしたりもします。それで新しいアイディアや、新しい風が生まれることもあるので、なにをしたいのかを明確にしたうえで、そのためにどんな手段を使うのかという話になってくると思います。

インハウスをやるべきかという問いに対しては、一回やってみた方が良いと思います。今話した通り、これは手段のひとつなので、どういう媒体を使うのか、どういうクリエイティブを使うのかといった考え方に近いものです。インハウスをひとつの手段としてとらえて挑戦してみるのが良いと思います。なにより、インハウス運用は楽しいものですよ。まずは、楽しんでみてほしいです。

栗原:私も、インハウスはやるべきだと思います。インハウスは、土台がなければできないようなものではなくて、インハウス化にかかる時間が違うだけだと思います。代理店さんに任せてスピードを出すのか、インハウスで進めてノウハウを貯めるのか、自分たちに必要なことを明確にしながら進めていけば、失敗は少ないと思います。

森下:結論としてインハウスはやるべきだと思います。挑戦することで、できることとできないことが明確になります。それは当社が特殊なわけではなく、みなさんもやってみればCPI・ROAS等の具体的な数値として見えてくると思います。

今後チャレンジしたいこととしては、インハウス化のメリットを生かして、オンラインとオフラインの施策を横軸を通しながら進めていくことです。トレーディングカードゲーム『カードファイト!! ヴァンガード』のソーシャルゲームアプリをリリースする予定ですが、本アプリはオフラインでカードファイト!! ヴァンガードを遊んでいるユーザー、過去遊んでいたが現在遊んでいないユーザーをどれだけ取り込めるかが大事だと考えております。そういったときに、オンラインとオフラインの施策を社内で一緒に考えられることがインハウス化のメリットだと考えております。

佐藤:インハウスに関しては、各社なりのバランスを大事にしながら、ひとつの手段として状況に応じて取り組んでいただくのが良いということですね。次はもう少し広く、軸であるデジタルマーケティングの領域を超えて、アプリ事業の成長のために、どんなことに取り組んでいるのかをお聞かせください。まずは栗原さん、外部と連携したイベントにより生まれた新しい機会や流れをお話しいただけますか?

栗原:今年から弊社のマーケティングチームの中に、新規でお客さんを獲得して、育成することを目的としたコミュニティマネージメントのチームを作りました。アプリでは、デジタルマーケティングの色が強いのでそういう話になりにくいですが、ほかの業界では一般的な話です。

コミュニティマネージメントチームを作り、インフルエンサーを生み出すのです。これはSNSの発言力ではなく、アプリの中での発言力が強い人を指しています。2年前ぐらいから、毎週お客さんを呼んでヒアリング会を開催していました。今年からは、お客さんが自由にうちの社内を出入りできるようなオフイベなど、運営との距離を近づけながら、お客さんが意見を言えるような、フランクな会を増やしていくつもりです。

佐藤:では、次に森下さん。御社はIPをたくさん保有されていますが、コンテンツ育成の機会はどのようなタイミングで生まれ、どのような機会を生み出しているかお話いただけますか?

森下:当社はIPデベロッパーとして0からIPを生み出し、流行らせていくことがミッションのひとつでございます。当社ではコンテンツを生み出すときには、応援したくなる或いは共感したくなるようなストーリーをいかに構築するかを重視しています。

たとえば『バンドリ!』では、最初のライブ会場は下北沢GARDENでした。収容者数は500人程度です。そこに来てくれるお客様が熱狂的なファンとなり以降のライブにも来てくれて、ライブの規模も徐々に大きくなり、バンドとして盛り上がっていきました。その後アニメを放送し、ゲームをローンチするという流れで、メディアミックス展開を進めていきました。

ここで、重要になるのは最初のライブからきてくださった『バンドリ!』ファンの方々です。当社では、よく雪だるまをたとえに使っているのですが、雪だるまの芯を硬くすること。つまりメディアミクス展開の初期のタイミングでバンドリ!を自ら広めてくれるようなファンをいかにして獲得するかが大事です。雪だるまの芯が硬いと、転がしていくうちに、コンテンツが自然と広がっていき、いつしかコンテンツが自走を始めて大きな雪だるまになっていくイメージです。この硬い芯が最初のコアユーザー様にあたります。こうした熱狂的なファンを獲得するための取り組みが、ストーリー設計を重視することです。

佐藤:ありがとうございます。事業成長という観点から新しい取り組みを行なうと新しい調整も生まれるかと思いますが、髙岡さん、新しい調整や連携が組織にプラスをもたらしたエピソードがあれば教えてもらえますか?

髙岡:インハウスというテーマに沿った話をするなら、先ほどクリエイティブの話をしましたが、クリエイティブ制作をプロモーションチームだけでやるのは、どうしても限界があります。そういうときにプロダクトサイドへ相談すると、制作側のデザイナーにクリエイティブ製作をサポートしてもらえるようになったことは、プロダクトサイドとの連携強化という意味でも良かったことだと感じています。

他にも、プロモデータの見える化やプロダクトサイドとのコミュニケーションの場を設けるなどにより、アプリ内施策と連動したプロモーションや収支に合わせた広告予算の調整を実施できるようになったことは、事業成長という観点で非常に良かったことだと感じております。

佐藤:栗原さんはいかがですか?

栗原:弊社では、今年から新しく求められている視点があります。去年までは用意された広告費で、どの媒体に使うのかという範囲でアロケーションしていました。

今年からは、新しく人を採用した方がいいのか、媒体に回した方がいいのかという考察も含めて運営しています。なので、週ごとに媒体費でいくら使ったのかを提示していたところを、新規採用、組織維持費、お客様へのプレゼント代といったところまで報告するようにし、全部を含めたマーケティング費として予算を持つようにしました。

佐藤:結果としてデジタルマーケティングチームとしてパフォーマンスが出しやすい土台作りに繋がったのでしょうか?

栗原:そうですね。人が必要だけど採用費が無い場合も、媒体費を削って採用費に充てたりできます。これはこれで、バランスが非常に重要になってきますけど、スピーディーな対応ができるようになったと思います。人やリソースがネックになって諦めることが減ったという印象ですね。
 

■インハウスマーケターとして重要な要素

佐藤:皆さん、さらなる組織変化のために取り組んでいることを教えていただけますか?

松尾:インハウスマーケティングにおいて、弊社では意識的に組織進化のために取り組んでいることはありません。我々のメイン事業のためになにができるかを考えつつ、データマーケティングに関しては、私たちの方からもマーケティングエンジニアと上手く連携しながら動いています。

あとは、今回が初めてになる試みとして、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)専門のグループを作ったことが挙げられます。アプリ業界では、CRM専門はまだ少ないと思いますが、現状はそこに対して、コミットしてくれる人間をアサインしています。

そもそも、なぜCRM専門のグループを作ったかというと、そこに対する人材や要素が足りていなかったからです。パーツが不足しているところに対して、この人と一緒に連携してくださいという形で進めながら、それが徐々に回り始めているといった状況です。

森下:弊社のインハウス化はまだまだ過渡期なので、ひとつアプリプロモーションを回すだけでも大きな進歩でした。ここで、大事なのはROASやROIといった、アプリ単体での広告回収だけでなく、インハウスチーム全体としての組織のPLで赤なのか黒なのかをチェックしていったほうがよいと思います。

アプリ単体のROASは回収できていたとしても、そこに対して多くの人員を割きすぎていたために、チームのPLは赤字でした。なんてことも場合によってはあります。であれば、代理店さんとの手数料兼ね合いで、外部に依頼した方が実は会社としては得なのではないか?みたいな議論もございます。そこもケアできるようなマネジメントをしていかなければいけないと考えています。

佐藤:これが最後のテーマとなりますが、皆さんが今、改めてインハウスマーケターとして重要だと感じていることと今後挑戦していきたいことをお話いただけますか?

栗原:体感的にも、CPIを重視して運用したときに、効果が悪くなっているというのは、みなさんも肌感覚として感じていると思います。低いCPIでユーザーを取れるアプリは年々減ってきています。ただ、これはマーケター側の常識であって、プロダクトサイドには話が通じにくいんです。

いまだに、マーケティング部は新規を安く獲得することが正義だと見られている節があります。インハウスでマーケをやるなら、そういった認識の違いを軽く見ていると、プロダクトと連携するうえで事故の原因になります。少し抽象的になりますが、プロダクト側との改めて相互理解するためにも、自分たちがどこを目指しているのかを、定期的に彼らの耳に入れ続け、コミュニケーションの質を上げることが、2年後3年後を見据えると大事になると感じています。

森下:私からは2つあります。まずは利益の追求がひとつ。もうひとつは、利益以外のファジーな部分にどれだけ投資していけるかを重要視しています。インハウスは、あくまで事業戦略を達成するための手段のひとつであり、事業戦略を遂行したうえで、自分たちが求める利益水準を確保できるかどうかが重要です。利益が出なければユーザー様が喜ぶようなコンテンツへの再投資はできませんから。

それと相反する話になりますが、当社がIPを育てていく企業ということもあり、ユーザーの皆様にコンテンツが流行っていると感じてもらうため、その期待に応えるため、ROIやROASといった直接的な回収指標には落とし込みづらいプロモーションも積極的に実施しております。

同じようなソーシャルゲームを扱っている企業のみなさんからすると、当社のプロモーションへの投資はどのような意思決定で行われているのかと思われるでしょうが、ああいった施策はユーザー様が喜びます。

コンテンツを流行らせ、ユーザー様にワクワクしてもらえるようなエンターテイメントを提供していくことがミッションですので、ROASやROIという指標では表現しにくいユーザー様の満足度を高めるための施策に踏み込んでいくことを大事にしていきたいと思っています。

髙岡:私も、プロダクトサイドとの連携は大事だと思います。インハウスマーケターとして、チームや事業部の目標達成に向けて、言われたことをやるだけではなく、主体的に行動していくことも重要になってきます。マーケターだからマーケティングやプロモーションだけをやっていればいいというわけではなく、事業の最適化を目指して、自社アプリの改善提案を出したり、業務の改善提案を出したり、リソースの配分を変えるといったことを主体的にやっていくことで、組織を変えることが重要です。

あと、マーケティング担当は外部の人と出会う部署ですから、そこで入手した外部やツールの情報を社内で共有することで、組織を活性化させることも必要になると思います。

松尾:弊社では、ユーザーサプライズファーストを重要な観点として設定し、ユーザーにいかに驚きを届けるかを、マーケティングでもゲームプロダクトでも重要視しています。インハウスマーケターは、自分たちでいろいろなことをコントロールできる分、新しいクリエイティブへの取り組みや、コンテンツの見せ方への取り組みなど、新しいことにどんどん挑戦していくべきです。

ただ、新しい施策を推し進めていくと、様々なところで軋轢を生んだりもします。その軋轢を緩和させながら、どう回避するのかも考えないといけませんし、ときにはぶつかりながらやっていくことだって必要になると思います。

インハウスマーケターは、上層部や経営陣から信頼されている人だと私は思っています。その信頼を勝ち取った以上、それにコミットするためにも、軋轢を生んでもいいから意地でも挑戦していく意気込みは重要だと思います。

佐藤:それでは、時間も迫ってまいりましたので、最後に質疑応答の時間を設けたいと思います。どなたか、登壇者の皆さんにお聞きしたいことはありませんか?

質問者①:とあるゲーム会社さんに、なぜインハウスにしないのかを聞いたとき、「ゲームは波が激しく、マーケティングに関しては雇用が流動的になってしまう」というお話を聞きました。そこで、みなさんはどういう条件が揃ったらインハウスにすべきで、どういう状況であれば見送るべきだと考えますか?

森下:単月の出稿金額が億を超えるのであれば、人月8~10人は取れると思います。今年は1億円を超える出稿が続く状態がないとなれば、来年のしかるべきタイミングに向けて動いておくといいのではないでしょうか。どれぐらいの人員であれば組織のPLとして黒か?代理店手数料と比較しても黒字になるラインは具体的な数値としてあるイメージです。

髙岡:弊社でも悩みはあります。波があるというのはその通りで、広告費が少ないときには効率化が求められると思います。ですので、弊社は、広告出稿にそこまで多くの予算は回してないので、最低限のリソースでやっています。

また、これからは広告運用よりもクリエイティブの制作体制を強化していくと思います。そういったメンバーは、クリエイティブを作るだけでなく、ゲーム内のデザインもできるなどマルチに活躍できますので、そこを見極めていく必要はあると思います。

あとは、最初にもお伝えした通り、内製だけでなく外部のパートナー様に協力して頂きながらコントロールすることでバランスを取っています。

質問者②:弊社も半年前からインハウス化を進めています。インハウス化したからこその成功事例があれば是非お聞かせください。

松尾:もともと代理店様が実施していた媒体をインハウス化することで、クリエイティブのチューニングといった面で、効率を上げることができました。ただ、インハウス化によって、効率が200%に上がったかというとそんなことはなく、劇的に向上するということではありません。代理店様が抜けたことによって、クリエイティブの知見が無くなるといったマイナスポイントの変化もあります。

佐藤:ありがとうございます。それではお時間となりましたので、これで本セッションを締めさせていただきたいと思います。ご清聴いただきありがとうございました。

(関連記事)

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でフォローしよう!

Next Marketing Summit イベント