【×Marketing】vol.1
『エレメンタルストーリー』危機的状況の打破とV字回復までのステップ。目指したのは日本一“距離の近い運営”

ゲームアプリ市場における先進的なマーケティング施策を取材した企画「×Marketing(かけるマーケティング)」。“掛ける(相乗効果で可能性無限)”と“駆け抜ける(新しい挑戦/気概)”をコンセプトに、習慣化しがちなゲームアプリ市場のマーケティング施策について、最新事例はもとより、一般化につながるノウハウをマーケターたちにお聞きしていきます。

記念すべき第1回目は、StudioZ株式会社が手掛ける『エレメンタルストーリー』の開発・運営チームに「長期運営×新規ユーザー」をテーマにお話を伺いました。

加藤 拓真 氏:『エレメンタルストーリー』プロダクトディレクター。ゲーム全体の開発・運営を統括。コラボ施策やグッズ企画などを含むアライアンス業務まで多岐に渡る。ユーザーには「加藤D」の愛称で慕われている。
磯 大吉 氏:『エレメンタルストーリー』PR担当。公式SNSの担当をはじめ、生放送の企画・出演、ゲーム内外の各種キャンペーン・プロモーション施策を担当している。生放送ではフランクに「大吉」という名前で出演している。
 

[Topics]
■とにかくユーザーに歩み寄る
■創意工夫のグロースハックでROAS10倍も
■緻密かつ大胆なASOで自然流入“増”
■目指すは日本一“距離の近い運営”

とにかくユーザーに歩み寄る

――:『エレメンタルストーリー(以下、エレスト)』のユーザー層について教えてください。

加藤:年齢層としては20~40代が中心です。『エレスト』は2020年6月で5周年を迎えるタイトルのため、長期的に遊んでいただいている方が多いですね。

もうすぐ5年ですが、今も長く遊んでいただいている方たちの熱量は非常に高いです。たとえば、ユーザーが自発的に大会を開催してくれたり、ゲーム外でも交流があったりと、一定のコミュニティが形成されていると思います。

『エレスト』は共闘と対戦のパズルRPGです。時間内に指でピースを並べ替えることで一度に複数のスキル(必殺技)が出せるため、思考力と爽快感を兼ね備えているのが特徴。また、全国のプレイヤーと1対1のリアルタイム対戦や、一緒にいる友達や近くの人たちと最大4人まで同時に遊べる協力プレイが可能です。

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――:リリース当初から現在までヒットし続けているという印象を持っていますが、長期運営タイトルだからこそ、壁にぶつかったことはありますか。

加藤:あります。前身のディレクターから私に切り替わったとき、さまざまなキャラクターを登場させましたが、そこを境にして徐々にKPIが下がっていきました。

通常、キャラクターの追加は喜ばれることですが、それが矢継ぎ早に続くことで、ガチャ利用による課金や育成過多など、ユーザーの可処分時間を必要以上に奪ってしまいました。このままではユーザーの疲労やフラストレーションがたまっていく一方だ……と、起死回生の一手として磯と実行したのが、とにかくユーザーに歩み寄ることでした。
 

――:どのようなことを行ったのですか。

加藤:自身のSNSアカウントでユーザーの意見を聞いたり、リアルイベントでは時間を惜しまず全国各地に足を運んでユーザーと直接対話をしたりと、とにかく接点の回数を積極的に増やしていきました。ときにはユーザー主催の生放送にゲストとして出演することもありましたね。元々、「ドリームボード」というご意見箱のようなものは常設で設置していたのですが、やっぱり「直接対話すること」が一番だと思っています。

:「運営はきちんと意見を聞いてくれる」というスタンスを表明したのです。運営側はこういう意図で実装していると、さまざまなツールや場所で説明する機会を増やしていきました。

真摯にデータや意図を開示することで、多くのユーザーの理解を得ることができました。加藤が生放送やSNSで積極的にユーザーに歩み寄ったことで、ユーザーは意見や不満などを直接届けることができ、一定のフラストレーションも解消することができたと思います。草の根活動ではありますが、開発・運営チームが一丸となって歩み寄ったことで、下降トレンドを止めて、KPIも徐々に改善させることができました。

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創意工夫のグロースハックでROAS10倍も

――:『エレスト』のマーケティングの強み・特徴について教えてください。

:「知恵を絞ったグロースハックの考え方」を重視しています。……というのも、単純に広告を回すといった「普通のマーケティング」をやっていては、より資金の潤沢な競合他社に勝ち目が無いからです。そのため「金より知恵」のスタンスで施策を展開し、最大限の効果を生み出すことを目指しています。直近では、3つの施策を意識して取り組んでいます。

① Twitterトレンド入りミッションなどSNS施策
② コア層にも届けるゲーム系IPとのコラボ施策
③ Vtuber200名以上を巻き込んだキャンペーン施策

:①Twitterを活用した施策には特に力を入れています。たとえば「Twitterトレンド入りミッション(※注:運営側が指定した特定のハッシュタグがTwitterトレンド入りを果たした場合にユーザーに報酬を配布する施策)」は、今でこそ色んなゲーム会社さんで実施されていますが、実は弊社が0から考えた施策なんです。

これも当初は、Twitterのプロモトレンドの商品価格を知ってたじろぎ(笑)、何とか知恵を使って同じようなPR効果が出せないかと考えた結果、実行に至りました。実際に熱量の高いユーザーが団結して、実際にトレンドに載るなど一定の成果を見せました。


加藤:②コラボ施策では、(IP)タイトル選定にこだわりを持っています。それこそ目先の収益を意識した人気の売れ線タイトルではなく、『エレスト』の世界観やユーザー層に適したタイトルを選んでいます。

世界観では、ユニークな能力を持ったキャラクターが登場していたり、コアなゲーム系IPとのコラボも親和性が高かったりしています。なかでもユニークな能力の面では、先日開催した「転生したらスライムだった件(転スラ)」コラボ施策で、原作の設定にちなんだ「捕食(※)」という新要素を取り入れました。ユーザーからの評価も高く、大きな話題となりました。

※捕食とは自身の攻撃でトドメを指すと、対象キャラクターの持つスキルやアビリティを自分のものとして使用できる特殊アビリティです。捕食は★6リムルと★5リムル&シズのみが持っています。

さらに2019年10月には『ポコロンダンジョンズ(以下、ポコダン)』さんと相互誘導コラボを開催しました。お互いのゲームをプレイすることで報酬が手に入るキャンペーンを実施し、通常月の約2倍のゲームユーザーのインストールを獲得することに成功しました。

『ポコダン』さんと『エレスト』は、お互いに各種市場調査でユーザー層に親和性があることを知っていました。実際に『ポコダン』さんのキャラクターのクオリティは高く、『エレスト』ユーザーも喜ぶこと間違いなしだと思いました。


:グロースハックという意味では、③Vtuber施策にもかなり力を入れています。通常のいわゆる「企業案件」はもちろん、大規模イベントの「エレストVtuber最強決定戦」も過去に3回実施しています。

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この施策は、ゲーム内キャラ実装と賞金100万円をかけた、Vtuber同士のPR配信ガチバトル企画です。YouTubeとTwitterを駆使して、リスナーと協力しながら上手に『エレスト』をPRしていくものなのですが、どんどん規模が拡大しており、直近では通常の広告と比べて10倍以上の投資対効果を得られるまでになりました

また、2019年11月に「Vtuber Post(https://vtuber-post.com/)」というVtuberポータルサイトを買い取ってからは集客力も格段に向上しています。昨年末に実施した新人Vtuber限定のPRキャンペーンでは、200名以上のVtuberがエントリーしており、ここまで大勢のVtuberが参加したプロモーション施策は国内でもほとんど例がないと思います。

Vtuber施策には、単純なプロモーションとしての成果以外にも、大きく分けて3つのメリットがありました。

・低コストでTwitterやYouTube上に『エレスト』関連動画が増える
・Vtuberと一緒に遊びたい視聴者にとってコアコンテンツである対戦に触れる機会になる
・優勝でゲーム内実装を勝ち取ったVtuberだけでなく、ユーザーにも自分ごとの様に喜んでもらえる

加藤:Vtuberは二次元キャラクターのため、ゲーム内実装後も違和感なく既存ユーザーが受け入れてくれました。むしろ、既存ユーザー自らがVtuberの生放送でアドバイスを送るなど、いろいろ手解きしてくれていたのは嬉しかったですね。“一緒に遊ぶ”ことによる楽しさを、全面的に伝えることのできた施策でした。

 

緻密かつ大胆なASOで自然流入“増”

――:新規ユーザーの獲得にはどのように捉えていますか。

:現在は、ASO(App Store Optimization – アプリストア最適化)に注力しています。ASOは、「ストアランキング上昇による自然流入の増加」と「アプリ詳細ページの最適化におけるDL率の上昇」を目的としています。『エレスト』でも過去に少し手を入れていたのですが、2020年1月末の「転スラ」コラボ前に徹底的に精査することにしました。

ASOに長けたマイネットさんの協力を仰いだのですが、最初は「長期運営タイトルでもKPIは上がるのか」と少し懐疑的でした。しかし、担当者による数字の根拠と裏付け、回収に至るまでのシミュレーションなどが大変素晴らしく、実施することを決めました。

アプリアイコンは、長年起用していたアテナから闇属性のキャラクターに変更しました。明るさの象徴である光属性から、真逆の闇属性のアイコンというかなり大胆な変更でしたが、担当者によるABテストで実は最も効果が出たクリエイティブだったのです。ダークな雰囲気をアイコンから感じ取っていただいたようで、これまでリーチできていなかったユーザーに訴求できたものだと感じています。

加藤:恐らく我々主導では、アプリアイコンの変更には躊躇していたと思います。今やアテナは『エレスト』を象徴するキャラクターですし、全社的にも外部バナーなどで積極的にアテナを掲載するように促されるほどでした。たしかにリリース初期は『エレスト』を認知してもらうためにも、アテナを採用し続ける必要はありますが、間もなく5周年を迎える長期運営タイトルの本作では、心機一転するためにもここが変えどきだったのかもしれません。

アイコンと同時にゲームタイトル画面にも闇属性キャラクターたちを採用したのですが、既存ユーザーからも「格好いい」「印象変わった」などポジティブな意見が多々寄せられました。そういう意味では、ASOを一手に担ってくれたマイネットさんの提案やサポートには、とても助かりましたし、なにより意思決定のスピード感は段違いでした。

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――:流入後の新規定着についてなにか行っていることはありますか。

加藤:既存ユーザーとのランク差などは極力埋められるように調整しています。たとえば、ランク100までは容易に上げられたり、一定ランク達成時にレアリティの高いキャラクターや報酬が手に入るお得な商品を提供したりと、さまざまな施策を打ち出しています。

あとはパズルゲームでは珍しいオート機能を2015年のリリース時より実装しています。コンテンツによってオート機能の進行速度も1.5倍速、2倍速と調整しており、なるべく短い時間でゲームを進められるようにしています。新規ユーザーがライトからミドルになると、面白さの幅も広がるため、そこまでストレスフリーでテンポよく進行できるよう考えています。
 

目指すは日本一“距離の近い運営”

――:今後の『エレスト』におけるマーケティングの未来像について教えてください。

:我々が目指しているのは、ゼロ距離運営です。マーケティングではなく“運営”という単語を用いましたが、実はここの精度を高めることで、間接的に(高品質な)マーケティング業務につながるものだと考えています。

ゼロ距離運営とは、つまり“ユーザーから見て距離の近い運営”のことです。現在『エレスト』ユーザーの多くは、リリース当初から長期的に遊んでいるコア層が中心です。これまで長い時間を『エレスト』に注いでくれているだけに、寄せられる意見には透明性をもって、真摯に対応していくものだと思っています。

古参のコアユーザーは、一定のコミュニティを形成しています。我々の運営・対応がコア層に伝わることで、彼ら、彼女らをハブにさまざまなユーザーに伝播していくことを考えています。「『エレスト』も好きだけど運営も好き」……そんなゲームになりたいですね。

加藤:磯が話したように、我々は日本一“距離の近い運営”を目指しています。ユーザーにとって意見が言いやすい環境を整え、我々が寄り添うことで新しい企画につながったりと、さまざまなメリットが生まれるものだと思います。引き続き、私も表舞台に立ちながら『エレスト』を積極的にPRしていきたいと思います。

最後にふたつ宣伝させてください。『エレスト』ではアプリ間コラボをしていただける企業様を積極的に募集しております。また、企業様のマーケのお手伝い(Vtuberを活用した施策など)も直近は力を入れておりますので、ご興味のある方はぜひお気軽にお声がけくださいませ!

――:本日はありがとうございました。

 


 
『エレスト』の開発・運営チームは、担当業務外でもさまざまな提案ができる環境があります。たとえば磯さんは、PR担当でありながら無料ガチャのタイミングなどゲーム内施策の企画・提案を担うこともあります。逆もしかりで、ディレクターの加藤さんが次のプロモーション施策のコンセプトを考えることもしばしば。

このように同チームは、立案した施策は担当業務内だけで完結せずに、自身がユーザーに歩み寄れる距離感まで、ゲーム全体を横断的に渡り歩くことができているのです。開発・運営・マーケにおけるコンセプトを明確化し、柔軟に業務を取りまとめているからこそ、長期運営タイトルでありながらも、こんにちまでロングセラーを記録しているのがうかがえました。

取材・執筆:原孝則
撮影・編集:NEXT MARKETING編集部

 

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