【×Marketing】vol.2
麻雀ゲーム『雀魂』大流行の背景とは。麻雀初心者も惹きつけるVTuber配信の効果をキーマンに訊く


ゲームアプリ市場における先進的なマーケティング施策を取材した企画「×Marketing(かけるマーケティング)」。“掛ける(相乗効果で可能性無限)”と“駆け抜ける(新しい挑戦/気概)”をコンセプトに、習慣化しがちなゲームアプリ市場のマーケティング施策について、最新事例はもとより、一般化につながるノウハウをマーケターたちにお聞きしていきます。

▲当日は、Yostarの代表取締役社長である李衡達氏(写真中央)、『雀魂』マーケティング担当者の伊藤茂氏(写真左)、VTuber施策の企画・技術面などを担うTheSwampman株式会社の代表取締役社長である横田雄士氏(写真右)の3名に集まっていただきました。

※先般の新型コロナウイルス感染の対策につき、
 マスクの着用及びインタビュー中は十分に距離をとってお話を伺いました

第2回目は、株式会社Yostarから配信されている『雀魂 -じゃんたま-(以下、雀魂)』について、マーケティング施策を担当するキーマンたちに「麻雀アプリ×VTuber」をテーマにお話を伺いました。

『雀魂』は、スマートフォン向け麻雀アプリのなかでもスマッシュヒットを記録した数少ないタイトルです。同作は2019年4月のブラウザ版リリースから、バーチャルYouTuber (以下、VTuber)を起用した生放送企画をはじめ、さまざまなオンライン大会など、積極的なマーケティング施策を展開してきました。

そして現在は、アプリストアの無料ダウンロード(DL)ランキングで高水準を維持しています。無料DL上位の維持は、新規ダウンロードが継続的にある状態であり、これまでの施策が寄与していることを物語っています。また、セールスランキングも麻雀アプリでは異例のTOP100圏内にランクインするなど、ゲーム内施策の妙も感じます。

 

[Topics]
■VTuberの方々による「ゲーム実況×企画×コラボ配信」という掛け算
■文脈を大切にし、リアルな楽しさを伝える
■麻雀初心者を惹きつけるVTuberの配信
■無駄のないデジタルマーケティング

VTuberの方々による「ゲーム実況×企画×コラボ配信」という掛け算

――:これまでYostarでは、『アズールレーン』を皮切りに、『エピックセブン』や『アークナイツ』などさまざまなゲームアプリを国内で発表してきました。今回の『雀魂』は、麻雀ゲーム(アプリ)ですが、そもそもどのような経緯で配信が決まったのでしょうか。

:『雀魂』は2018年に中国本土でリリースされた麻雀ゲームです。中国版は、(PC向け)ブラウザ専用として運用されていましたが、リリースされるやいなや、一躍人気タイトルとなりました。ヒットの要因はさまざまですが、とりわけプレイ中に交流をはかれるチャットやスタンプ機能が中国のSNS環境と愛称がよく、かつキャラクターの魅力も後押しして、口コミ効果で人気が広がっていきました。

▲『雀魂』はオンラインで全国のプレイヤーとリアルタイムで対戦できる(日本式ルールの)麻雀ゲーム。全世界のプレイヤーと対戦できる「段位戦」、チャットを通して友人と好きなルールで対戦できる「友人戦」、プレイヤー同士で開催/参加できる「大会戦」など、さまざまな対戦スタイルにより、麻雀の初心者から上級者まで幅広く楽しめる。ゲーム中に登場する可愛らしいキャラクターたちも魅力のひとつ。

:そして、Yostarの中国本社から「『雀魂』面白いし人気だから日本でも展開しない?」と勧められたのですが、正直そのときはまだ懐疑的でした。そもそも私は麻雀のルールが分からなかったですし(笑)。
 

――:あまり乗り気ではなかったのは、国内で事業的な成功が見えなかったということでしょうか。

:そうですね。のちにマーケティングを担当する伊藤にも、麻雀ゲーム市場を調査してもらったのですが、実はあまり芳しくない数字が出てきました。直近では、M.LEAGUE(競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグ)などが盛り上がっていますが、やはり“麻雀”というジャンルで見たときに、年齢層の高いユーザーが中心となります。

『雀魂』は、見た目が萌え系タイトル(二次元の女性キャラクターが多数登場する作品)のため、若いユーザーからの第一印象は良いですが、コアコンテンツが麻雀のため、果たして相性がいいのか、悪いのか、とても不安に思っていましたね。

一度、保留にしようかと思いましたが、本社をはじめとする役員の面々が「面白いから」と推してくれたことにも加えて、弊社も経営的に体力が付いてきたころなので、新しいジャンルとして打って出ようという気持ちで国内リリースを決めました。
 

――:麻雀ゲーム市場の調査にあたった伊藤さんは、『雀魂』リリースについてどういう印象を持ちましたか。

伊藤:すでに麻雀ゲーム市場には、偉大な先輩方(先行タイトル)がいらっしゃるうえ、それぞれ固定ファン(ユーザー)も付いている状況でした。つまり、麻雀ゲームでヒットするためには、これらのファンに訴えかける必要性を感じていました。

ただ、実際に2019年4月末のブラウザ版リリース後は、意外にも10代~20代の若いユーザーが遊んでいることがすぐに分かりました。恐らくリリース当日の公式生放送でVTuberを起用したり、キャラクターの印象だったりと、さまざまな要因があると思いますが、既存の麻雀ゲームとは異なる層に訴求できたことはいい形でスタートを切れたと思っていました。
 

――:横田さんは、これまでも外部としてYostar関連タイトルのマーケティング施策を担ってきたと思います。『雀魂』でもリリース前から携わっているとのことですが、マーケティングについてはどのようなことを考えましたか。

横田:最初に決めたのは、「普通の広告をやっても絶対に意味がないからやらない」ということでした。先ほども話に挙がったように、既存の麻雀ゲームにはすでに固定ファンが付いているほか、『雀魂』は世界観を含めて毛色の違うタイトルです。普通に新作の麻雀ゲームを宣伝するような施策では、どう考えても効果は薄いだろうと思ったのです。それはYostar側も同じ認識を持っていました。

:そうですね。これは満場一致でした。仮に潤沢な予算があったとしても、この問題は解決できないだろうと思いました。

横田:そこで着目したのが、VTuberによるライブ配信でした。VTuberの方々のライブ配信には、大きく分けて「ゲーム実況」「雑談」「企画」「歌配信」などがありますが、そこへの掛け合わせとしていわゆる「(VTuber同士の)コラボ」という手法があります。

麻雀配信は「ゲーム実況」の要素もありますし、特に複数人のVTuberの方々で「コラボ」の形式を取れば「雑談」の要素もあります。何かしら特殊なルールを設けながらプレイをすれば「企画」との掛け算にもなります。さらに視聴者参加型の配信もできるので、相性の良さはもちろんのこと、VTuberの方々に題材として取り扱っていただきやすいであろうと考え、VTuberの方々ならびにそのファンの方々に向けた施策に振り切ることにしました。
 

――:VTuberを起用した公式生放送の1回目(関連動画)は、ブラウザ版のリリース日でもある2019年4月25日でした。当日の放送中にリリース日が“今日である”ことを発表するなど、さまざまなサプライズもありましたが、VTuberを起用するなかで裏方ならではの技術的なご苦労もあったかと思います。

横田:当初は、その公式生放送に関しては声優の方々を起用した生放送で進行していたのですが、どうしてもスケジュールが合わず断念しました。

そこで急遽VTuberの方々を起用する形での企画に切り替わったのですが、普段VTuberの方々に関わっている制作スタッフも自分以外おらず、スタジオ環境もそれに適したものではなかったため、時間的制約や技術面を含めた苦労は確かにありました。

ただ、せっかくVTuberの方々に出演していただくのであれば、だれも見たことのない画作り(画面構成)を考えて、視聴者を驚かせようと実現したのが、当日の“あの”形です。

『雀魂』第一回公式生放送のスクリーンショットより
 

――:実写出演がYostarの取締役である金傑さんがただひとり、あとはディスプレイ……。たしかにすごい画作りですね(笑)。奇しくもこの一年後には、コロナ禍でテレビ各局の番組でも採用された画作りでもあります。

横田:当時キズナアイさんがテレビなどに出演される際に、物理的なモニターに映る形でご出演されていたのを覚えていて、参考にさせていただきました。いわゆるクロマキー合成でVTuberのみなさんのお姿を映し出すのではなく、あえて人間は金さんひとり、それ以外は全てディスプレイモニターとiPadを並べてVTuberの方々やVTuber運営企業の代表陣に出演いただく形をとりました。

その公式生放送の場でリリース日発表、天開司さんの公認プレイヤー就任発表、ホロライブの白上フブキさんにアンバサダーを務めていただいた「雀魂プレゼンツ VTuber 麻雀トーナメント 白上フブキ杯」という麻雀大会の発表を行いました。

この大会では白上フブキさん、天開司さんをはじめ、個人勢・企業勢問わずさまざまなVTuberの方々、ゲームメディアのインサイドさん、ライブ配信プラットフォームのREALITYさんにもご協力いただき、『雀魂』のリリース初期を非常に盛り上げていただきました。
 

――:良質な生放送を実現するために、スタジオには多種多様な機材を用意しているとお聞きしました。

横田:VTuberの方々を起用した生放送はやりたいことに対して、技術的な課題が色々と出てきますし、それらをさまざまな機材で工夫をしながらひとつひとつ解決してきてはいるのですが、そのおかげで機材が増える一方です(笑)。

:Yostar所有の専用スタジオがありますが、もう機材が入らなくなるほど(笑)。
 

――:(笑)。ちなみにブラウザ版のリリースから、年齢層の若いユーザーが『雀魂』を遊んでいるとのことですが、そのなかには “麻雀をはじめて遊ぶ”という人も多いのではないでしょうか。数字として証明することは難しいため、定性的な情報でも構いません。

:そうですね。Twitterで情報を見る限りですが、たしかにいらっしゃいます。恐らく公式生放送を視聴して興味を持ったユーザーが多数いたと思います。
 

――:麻雀のルールを知らない人に、麻雀ゲームを遊ばせるのは至難の業だと思います。ゲームジャンルのなかでも麻雀は、どうしてもハードルが高い分類のひとつです。

横田:恐らく今回の結果につながったのは、麻雀本来の魅力や楽しさを、間接的に伝えられたのが大きかったと思います。

たとえば、リアルの麻雀の面白さは、4人でひとつの卓を囲んで雑談しながら楽しみ、雀荘でもほかの卓を覗いたり、知らない人でも一緒に卓を囲んだりするなど、コミュニケーションに根付いたゲームじゃないですか。

一方で、ゲームのオンライン麻雀は、たしかに全国のユーザーと遊べるメリットはありますが、基本的に画面の前で黙々とひとりで遊ぶことがほとんどです。

『雀魂』はオンライン麻雀ですが、VTuberの方々による「ゲーム実況×雑談(or企画)×コラボ配信」という掛け算で、結果的にリアルの麻雀の持つ面白さに限りなく近い状況を表現できたのではないかと考えています。またそういった配信のもつ雰囲気がユーザーの裾野を広げた要因の一つになっているのかなと。
 

――:面白いですね。オンライン麻雀からリアル麻雀の魅力を再発見できている。VTuber施策の掛け算が、麻雀の原点に立ち返っているのは巧妙かつ正道で美しいです。

横田:大変ありがたいことに、本当に多くのVTuberの方々に『雀魂』を題材とした配信をしていただけているのですが、プロ顔負けの勉強になる解説配信をされる方や、漢気麻雀というある種の縛りプレイでコラボ配信をしていただける方など、さまざまな形で『雀魂』の配信を行っていただけているのが、自分自身も視聴者としてとても楽しませていただいています。
 

――:麻雀というものがゲームとして確立されているので、企画や見せ方を柔軟に変えても視聴者が楽しめるのはひとつの強いかもしれませんね。一見、初心者にはゲームジャンルとして複雑そうで取っ付きにくい印象がありますが、企画の制限がないぶん、さまざまな切り口で麻雀の魅力を知ることできるのは、個人的に考えもよらなかったです。

▲なお、2020年6月25日には、TVCM(アニメ)を放映開始。アニメを制作したのは、Yostarの関連会社である株式会社Yostar Picturesです。4月末から制作を開始し、放映開始は6月末。李氏いわく「コロナ禍のため、外部の会社に依頼したら間に合わなかった」と振り返ります。人気に火が付いた4月のタイミングから、なるべく早めにユーザーと親和性の高いアニメCMを打ち出すのは素晴らしい。アニメ制作スタジオを関連会社で持つという強みを感じさせるエピソードでした。
 

文脈を大切にし、リアルな楽しさを伝える

――:昨今、ゲームアプリのマーケティングにおいて、VTuberを起用した施策がさまざまあると思います。VTuber施策を行う際に気を付けているところはありますか。

横田:とにかく文脈を大切にしています。これはVTuberの方々を起用したものに限らず、いわゆるインフルエンサー施策全般、あるいはマーケティングという概念そのものにとって重要なことだと思います。文脈がないものには人の感情は付いていきません。

仮に、我々が最初の公式生放送でVTuberの方々に限らず、声優の方であったり、芸人の方であったり、麻雀にも関係なく、とにかく今人気がある人をごちゃ混ぜにした放送をやっていたら、現在のような状況は作れていないと思います。

そういう意味では、リリース当初から、天開司さんを起用できたというのは「僥倖っ・・・・!なんという僥倖・・・!」という感じでした(笑)。

――:(笑)。最初に声をかけたのが天開司さんとのことですが、起用した経緯は。

横田:単純に私が天開さんがすごく好きだったからということと、天開さんが麻雀が大好きだったからです(笑)。

というのも、縁があって初めて直接お話したときに、天開さんに「麻雀はお好きですか?」と伺ったところ、「なにを言っているんですか。自分の目、イーピンですよ。麻雀大好きです」とお答えいただいたので、「天開さんであれば、間違いなく高い熱量でこのプロジェクトをご一緒できる!」と確信し、そこから天開さんを軸にブラウザ版リリース時の施策を組み立て始めました。

▲バーチャル債務者Youtuberの天開司(てんかいつかさ)。目がイーピン(麻雀の牌の種類)。チャンネル登録者数は14.7万人(2020年7月8日現在)。画像は『雀魂』動画のサムネイルより。
 

――:つまり、コンテンツの相性とタレントの熱量が合致したと。

横田:そうですね。VTuberの方々に限らず、いわゆるインフルエンサーの方々は仮にご自身があまり興味がないコンテンツであったとしても、仕事としてしっかり下調べをしたうえで発信いただけたりもしますが、もちろんベストは本心から興味をもって取り組んでいただけることですし、視聴者の方にとっても自分の”推し”が楽しく配信されている様子を観れたほうが良いに決まっています。そういう意味でも、天開さんを起用させていただいたというのはごく自然な文脈かなと。
 

――:表面的な数字だけを追って、文脈やVTuber各々の特色を軽視することがあってはならないと。それが結果的には、ゲームの魅力が伝わらないうえに、仮に流入があったとしても継続率には寄与しないということでしょうか。

横田:はい。結果も良くない、タレントも楽しめない……それって一番残念ですよね。だからこそ、ただ単に起用させていただくのではなく、タレントの方の興味関心や背景にある文脈を理解したうえで、起用意図をお伝えして、企画や施策を設計して、お仕事をお願いするのが我々マーケターがやるべきことかなと。

:Yostarも同じ思想を持っています。『雀魂』に限らず、これまでのタイトルでもさまざまな方が施策に携わり、成果に寄与してくれました。我々としても、弊社に関わるすべての人を幸せにしたい気持ちがあるので、「楽しくない」ことは依頼しません。

伊藤:たとえば直近弊社では、3次元モーションキャプチャシステム「VICON」を導入したスタジオを設立したのですが、『雀魂』のYouTube公式番組「てん×くす」に出演いただいているVTuberの楠栞桜(くすのきしお)さんの3Dお披露配信にYostar Picuresさんとご一緒に技術協力を担当しました。配信自体、非常に楽しかったですし、視聴した方も楽しんでいただけたのではないかと思っています。

――:ただ案件として関わるだけではなく、中長期的に一緒に盛り上げてくれるプロジェクトメンバーのようですね。困ったときや、さらなる飛躍の際にサポートしてもらえるのは、関係者にとってもありがたいと思います。

 

麻雀初心者を惹きつけるVTuberの配信

――:2020年7月現在、『雀魂』はアプリストアの無料DLランキングで上位にランクインしています。ただ、ランキングを振り返ってみると、4月上旬に200位圏外から50位に急浮上を果たし、以降徐々に順位を上げて6月末に最高4位を記録しました。この期間になにが起こったのか、アプリ版リリースの2019年11月から振り返って教えてください。

:『雀魂』は、ブラウザ版が先行リリースしていたこともあり、アプリ版リリースの1ヵ月後にはすでに利益が出ていました。いわゆる“回収”できた、ということです。経営者としては、赤字タイトルではなくなったので、心理的負担がなくなり胸をなでおろしましたね。そこから、マーケティング施策でも積極的に仕掛けていきました。

伊藤:リリース直後は、新作の恩恵としてある程度流入もあるので、1~2ヵ月後の落ち着いたころから本番だと思っていました。

そして、落ち着きを見せたタイミングに立ち上げたのが、VTuberである天開司さんと楠栞桜さんによる公式番組「てん×くす」(関連サイト)です。これまでは、一時的に生放送番組や大会を開催してきましたが、これらをレギュラー番組化(1ヵ月に1回YouTubeで配信)にしました。第1回目を2020年2月に配信したのですが、ここからDAUにもいい傾向が見えてきました。

 
 

――:VTuberのファンが、番組を一緒に楽しむために『雀魂』をインストールした可能性もありますね。

伊藤:ええ。この「てん×くす」を機にエンジンがかかり、DAUも徐々に伸びていきました。「麻雀ゲームアプリなら『雀魂』」という一定の知名度を得たと思っています。
 

――:エンジンがかかっている状態で、ターニングポイントになったのが4月の施策だと思います。ここでは、どのようなことが起こったのでしょうか。

横田:最も寄与したのは、総勢44名のVTuberの方々が参加された大会「にじさんじ最強雀士決定戦」です。これはバーチャルライバーグループ「にじさんじ」所属の舞元啓介さんが主催された大会で、2020年4月12日に舞元さんのYouTubeチャンネルにて配信されました(特設サイト)。

横田:舞元さんには、リリース初期の「白上フブキ杯」にもご参加いただき、初期から『雀魂』をプレイしていただいておりましたし、アプリ版リリースタイミングに実施した番組企画にもご参加いただいたりと、初期から『雀魂』を支えてくださった方のひとりです。

そんな舞元さんから、「にじさんじ」を運営されているいちから株式会社を通じて、この大会を主催したい旨を伺ったときは本当に驚きました。そこで我々は舞元さんの大会運営支援という形でサポートさせていただきました。それまでも充分順調にDAUが伸びてはいたのですが、この大会の告知を皮切りに目に見えて『雀魂』の新規プレイヤーが物凄く増えました。
 

――:開催は4月12日ですが、視聴者は事前に扱うタイトルを知ろうと『雀魂』をインストールしたわけですね。たしかに人気VTuber44名が参加し、それぞれが大会に参加する旨を告知すれば、えらいことになりますね。

横田:そうですね(笑)。大会当日の同時視聴者数も最大7万人超えを記録するなど、麻雀を題材とした配信としては異例の注目度でした。

この大会が実現できたのは、舞元さんに「『雀魂』で麻雀大会を開きたい」と考えていただけたから、というものに尽きますが、そう思っていただけたのは舞元さんも交流の深い天開さんが公認プレイヤーとしてリリース時からずっと『雀魂』をプレイしてくださっていることなども要因としてはあるのではないか、と想像しています。想像なのでご本人にそれを伺ったことはないのですが(笑)。
 

――:運営側がVTuberを集めて大会をするケースとは少し異なり、タレント自らが先導して熱量が高いまま実現したのですね。「好きだから、遊ぶ」この想いは強いと思います。

横田:特に舞元さんのこの大会は対局者同士がお喋りをしながら卓を囲むという、まさにリアルの麻雀の持つ面白さを凝縮したものでしたし、勝敗のドラマがあったのはもちろんのこと、なによりみなさんのお喋りも非常に楽しいものでしたので、大会終了後「麻雀のルールは分からないけど、凄く面白かった!」といったコメントやツイートを数多く目にしました。

麻雀が分からなくても面白いのであれば、麻雀が分かればもっと面白いはず。つまり、麻雀が分からない若い世代が『雀魂』をインストールするきっかけには「自分の”推し”が好きな物事を理解したい」「一緒に楽しみたい」という想いがあったのかなと思います。

伊藤:麻雀は、1人が勝って3人が負けるというルールです。ゲームの継続率を考えたとき、負けがつづくと辞める原因につながるのではないかと覚悟はしていましたが、意外にも『雀魂』は継続率が高いです。恐らくキャラクターの魅力をはじめ、VTuberの方々と一緒に遊べることがユーザーを支えるきっかけになっているのかもしれません。
 

――:改めてVTuberと麻雀の相性の良さを感じます。今回の総勢44名のVTuberが参加した大会でも、強者が集うハイレベルな卓もあれば、「え、それ切るの?」と思わず視聴者もツッコミたくなる微笑ましい卓もあるなど、十人十色。ひとりひとりの個性が尊重されているのは、各VTuberのファンにとっても嬉しいことですよね。

横田:ええ。個人的に『雀魂』は必ずしも「麻雀が上手い人が正義!」という世界にはあまりしたくなかったりするので、麻雀というゲームの楽しみ方の多様性をVTuberの方々に配信を通して表現いただけているのは本当にありがたいです。あと配信や企画を通してVTuberの方々の成長を追えるのも凄く面白いですね。
 

――:成長ですか。

横田:たとえば、公認プレイヤーである天開司さんは、「てん×くす」第1回のゲストで登場したプロ麻雀士の多井隆晴さんに、ご自身のプレイを「うまぶり(上手ぶってる)」と評価され、そこから一念発起し、改めて麻雀を学びなおしてご自身の雀力を研鑽されたのです。

そして、1周年記念の大会で再び天開さんのプレイを見た多井プロが、「本当に上手になった。本当にこの期間練習したんだな、っていうのが凄い伝わりました」とその成長を高く評価しました。天開さんご本人も凄く喜んでいたし、なにより頑張ってきた姿をよく知っているファンのみなさんにとっても象徴的な場面だったかと思います。本当に感動しました。

▲多井プロが天開司さんの成長を高く評価した「一周年大感謝杯」(おふたりのコメントは3:34:15より)
 

無駄のないデジタルマーケティング

――:デジタルマーケティング(以下、デジマ)についてはいかがですか。

:主に利用しているのは「Googleアプリキャンペーン(AC)」「Apple Search Ads」「Twitter」の3つです。2月頃本格的に流入増加の兆候が見られたので、このタイミングでACとApple Search Adsを大きく伸ばしました。

横田:元々デジマを専門にしている私としては、DAU構成比率のうちいわゆるUA(ユーザー獲得)を目的としたデジマ経由のユーザーがDAU全体の2割~3割程度を占める状態かつ、その比率をキープしながらさまざまなマーケティング企画・施策を通してDAU全体を継続的に伸ばしていけるのが理想だと考えています。

言い換えるとDAUを構成する大半はそもそもUAを目的としたデジマではなく、いわゆるオーガニックのユーザーによって構成されたDAUになるのが自然である、ということです。ここがアンバランスになると、UAを目的としたデジマを有効に活用できていない、あるいはそもそも有効なマーケティング企画・施策が打ち出せていない、ということになるので。

『雀魂』は現在理想的な状態を実現していて、毎日たくさんの新規のプレイヤーさんが増えていますし、DAUも継続的に伸び続けています。あとは本質的じゃないことをやらないのも大切ですね。
 

――:本質的じゃないこと、ですか。

横田:たとえば、オーガニックの流入を吸い上げてしまう広告手法などです。かなり巧妙化しているので知らずにそういった広告手法を使ってしまうケースはよくあることとは思いますが、しっかり目利きをして本質的に価値のあることだけを選択するようにしています。

:そうですね。意味のないことはひとつもやっていないです。自分たちの手でコントロールでき、なおかつきちんとした媒体しか使用しない。ゲーム特性も考慮し、まずはAC、Apple Search Ads、Twitterの3つに絞って配信を行っています。

AC、TwitterについてはYostar社内で運用し、Apple Search AdsについてはUNICORN(関連サイト)という広告プラットフォームを活用し、運用の完全自動化を実現しています。

最近のゲームアプリ市場は、目の前の数字や獲得に躍起となり、変な方向に努力しすぎています。ユーザーのことを第一に考えれば、マーケティングでも信憑性のある確実にクリーンな媒体を使用するべきです。

伊藤:デジマはさまざまな媒体やツールを使用することが多々ありますが、本当に必要なものだけに集中投下することが効率的だと考えています。今使用している媒体については、ASOなど副次的な効果を考えると引き続き運用していきたいです。
 

――:最近のデジマのトレンドでは、iOS14のアップデートも注視されています。iOS14からIDFA(Identifier For Advertising – iOS端末の広告識別子)取得のオプトアウトの選択がアプリごとに強制され、ユーザートラッキングにも影響を及ぼします。みなさんはどのように捉えていますか。

横田:我々に関しては、正直なところ影響はありません。

たしかにIDFA取得率が大幅に下落することで、たとえばリエンゲージメント系の広告にも影響を及ぼしますし、先ほど話題にでた本質的ではない広告手法についてもIDFAが取得できないことで淘汰されていくとは思いますが、我々は以前から見えていない数字を読み解いたり、それこそ数字だけでは推し量れないユーザーエンゲージメントを高めることに予算を投じたりと、さまざまな“施策や企画”に注力しています。

もちろんトラッキングツールであがってくる数字は参考程度にはしますが、それがすべてではないという認識を持っています。

:ここ数年でデジマが発達したことで、数字からさまざまな傾向が見えるようになりました。ただ、広告を打ち出す際は、その数字だけを心酔はしません。むしろ数字に傾倒していたら、『雀魂』はこうはなってはいなかった。

広告は正しいタイミングで、かつハイセンスなクリエイティブで、ユーザーに届けていくものです。そういう意味では、iOS14以降はデジマも原点に立ち返りますし、マーケターとしての真の価値が問われるのではないかと思います。
 

――:それでは、最後に今後の展望について教えてください。

横田:日々、楽しんでいるユーザーやDAUの規模を見ているなかで、当然、自分たちが掲げている数値目標はあります。ただ、必達かと言われれば、あくまでも「ここまで行ったら素晴らしいね」という願望程度です。それよりも、今は目の前のことに向けて、魅力的な施策を随時展開し積み上げるフェーズだと思います。結果はあとから付いてくれればいいという感覚で、これからも『雀魂』に携わっていきます。

伊藤:ここまで『雀魂』に注目が集まったのも、ひとえに先輩方(既存アプリ)がこれまでたくさんの成功と失敗の糧で麻雀ゲーム市場を積み上げてきたおかげだと思っています。『雀魂』をきっかけに、はじめて麻雀を遊んだ方々もいるなかで、これからも麻雀人口の拡大にも寄与できればと思っています。あとは個人的な野望として、TVアニメ化を実現したいですね。

:当初は「オフィスの家賃くらいになれば…」なんて冗談を言っていたものですが、今ではYostarの主力タイトルのひとつに成長しました。当然、事業的にもさらなる成長を目指しますが、まずはユーザーの満足度にきちんと目を向けて運営することが大切だと思っています。日本の若いユーザーが、麻雀を知る良いきっかけになっているのであれば、これからもその魅力を『雀魂』を通して伝えていければと思っています。

――:本日はありがとうございました。

株式会社Yostar

TheSwampman株式会社

取材・執筆:原孝則
撮影・編集:NEXT MARKETING編集部

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でフォローしよう!