【×Marketing】vol.8
誰もが出場したくなる大会作りへ。5周年を迎えた『Shadowverse』から見えてきた“eスポーツ”の魅力とは

ゲームアプリ市場における先進的なマーケティング施策を取材した企画「×Marketing(かけるマーケティング)」。“掛ける(相乗効果で可能性無限)”と“駆け抜ける(新しい挑戦/気概)”をコンセプトに、習慣化しがちなゲームアプリ市場のマーケティング施策について、最新事例はもとより、一般化につながるノウハウをマーケターたちにお聞きしていきます。

第8回は、株式会社Cygamesマーケティング本部メディア室マネージャー、eスポーツ室マネージャー・川上尚樹氏に対戦型オンラインTCG『Shadowverse(シャドウバース)』における「eスポーツ事業」をテーマにお話を伺いました。

▲川上 尚樹 氏:株式会社Cygamesマーケティング本部メディア室マネージャー、eスポーツ室マネージャー。メディアプランナーとして入社後、eスポーツのプロリーグ立ち上げや世界大会の運営に携わる。

 

[Topics]
■綿密なゲーム内外の連携した施策
■ユーザーの成長に合わせた様々な大会
■選手ひとりひとりが輝ける舞台へ

 

綿密なゲーム内外の連携した施策

――本日はよろしくお願いします。まず川上さんが在籍されている「eスポーツ室」とはどういう部署でしょうか。

もともとはメディア室という部署でしたが、2021年4月からeスポーツに特化した部署を作るということで、新たにeスポーツ室が併設されました。イベントや配信番組などを展開する部署からeスポーツ部門を独立させた形となり、現在10名ほど在籍しています。

――御社に関わる(競技系の)大会のほとんどが、eスポーツ室が主体となって企画・運営されているのでしょうか。

はい。事業としては『Shadowverse』における大会運営が中心で、3ヶ月ごとに開催される大規模な賞金制大会「RAGE(※)」を主催のCyberZさんたちと連携して運営したり、世界大会「Shadowverse World Grand Prix」なども開催しています(世界大会は海外事業部などと連携)。

※RAGE:国内最大級のeスポーツイベント。株式会社CyberZ、エイベックス・エンタテインメント株式会社と株式会社テレビ朝日の3社で協業し運営している。主にオフラインで開催する一般参加型の「イベント」と、プロ選手による競技をオンラインで配信する観戦型の「プロリーグ」を実施。イベントでは、複数のジャンルに渡るゲームタイトルが一堂に介し、各タイトルの最強王者を決めるeスポーツ大会のほか、会場限定の大会や新タイトルの試遊会、アーティストライブなども行っている。

▲2021年6月13日に開催された大会「RAGE Shadowverse 2021 Summer」GRAND FINALSの模様。累計視聴者数は19万人を突破している。

また『Shadowverse』では、サービス開始と同時期から、大会やイベント開催のサポートを行うコミュニティ施策も行っています。全国の店舗で行われるES大会(Shadowverse Event Support)がその一環です(※)。

更に最近では『グランブルーファンタジー ヴァーサス(GBVS)』のeスポーツ業務を行っているメンバーもいます。

ES大会(Shadowverse Event Support):個人、企業、団体が『Shadowverse』の大会を開催し、Cygames側は各大会の上位入賞者に贈られるゲーム内アイテムの特典などを提供している。専用サイトでは、各地で開催されているES大会のイベントスケジュールを掲載したり、イベント開催を希望する問い合わせフォームを備えたりと、主催者・参加者それぞれが気軽に大会を開催できる座組を整えている。

■『Shadowverse』について

▲5周年オリジナルPV

本作は、Cygames が開発・運営を手掛ける、スマートフォン向け対戦型オンラインTCG(トレーディングカードゲーム)。「フォロワー」「スペル」「アミュレット」という3種類のカードで40枚のデッキを編成して戦い、相手リーダーキャラクターの体力を0にしたら勝利となる。2021年現在、日本語を含む9言語が世界にリリースされ、累計ダウンロード数は2,200万を突破。競技性の高さを生かし、賞金総額2億8,000万円の世界大会開催やプロリーグの設立など、eスポーツシーンにも参入している。

 

――川上さんはeスポーツを通して『Shadowverse』に長く関わっていらっしゃいますが、現在のユーザー層についてどのように感じていますか。

サービス開始直後は、10代後半から20代前半までの方が多かった印象がありました。そこから5年が経過していますが、大会参加者の年齢を見ていると変わらず10代後半から20代前半の方も多いため、引き続き若い世代に支持されているのかなと思います。

実際に大学生の間でもサークル活動で『Shadowverse』をプレイして、スキルを磨いて大会に参加していただけるケースもあります。
 

――若年層のユーザーが多いとのことですが、TVアニメ『シャドウバース』では、Nintendo Switchにてコンシューマー版『シャドウバース チャンピオンズバトル』を発売するなど、さらに若い世代をターゲットとしているのでしょうか。

アニメは完全オリジナルストーリーのため、従来のファンも楽しめるものにしつつ、これまで『Shadowverse』に触れてこなかった小学生や中学生の方でも楽しめるものになっています。
  

――まずはアニメなどを通して『Shadowverse』の存在を知ってもらい、行く行くはアプリ版も始めてもらえればと。

そうですね。さらに言うと、我々eスポーツ室としては大会にも出場していただけるようにしなければなりません。コンシューマー版の公式大会は、コロナ禍の影響で開催はできませんでしたが、アニメやコンシューマー版から『Shadowverse』を始めた方には、ぜひアプリ版も遊んでいただき、そちらの大会出場を目指してほしいですね。

▲『シャドウバース チャンピオンズバトル』第2弾PV
  

――eスポーツといえば、大会(イベント)の開催がメインといえますが、その後の「優勝者デッキの公開」など細やかな配慮もユーザーの嬉しい要素のひとつではないでしょうか。

それを楽しみにされているユーザーも多いですね。本作は対戦がメインコンテンツであり、さらにTCGという特性上カードのデッキ編成が勝利の鍵を握ります。そういう意味では、優勝者をはじめとする大会出場者のデッキには、おのずと注目が集まります。

実際に大会後は、優勝者のデッキを使ってランクマッチを行う方が増えるだけではなく、そのデッキ編成に対して有利なデッキ編成は何なのかなど、ユーザー間でゲーム環境について議論されたりします。ただ大会(イベント)を開催して優勝者が決まっておしまい……ではなく、その後のユーザーのモチベーションを向上させたり、次のアクションにつなげたりする要素も、eスポーツ事業は担っていると思います。

 

ユーザーの成長に合わせた多様な大会

――店舗で開催されるES大会では、どのようなサポートを行っていますか。

参加者や優勝者へのゲーム内アイテムの付与に加え、主催者様から「もっとこういうことがやりたい」という要望があれば、場合によっては直接現地に赴いて手伝うこともあります。『Shadowverse』を地方のコミュニティ活性化に使っていただけるのは、弊社としても大変ありがたいことですし、協力できる体制を整えています。
  

――実際にコロナ禍の影響はありましたか。

オフラインのES大会については一時停止することにしましたが、スマホさえあれば大会が開けてしまうという特徴を活かし、現在はオンラインで開催できるよう切り替えています。
  

――ほかにはどのような大会を開催していますか。

「RAGE」のほかにも、年に一度の高校生大会「シャドバ甲子園(関連サイト)」や、大学生限定のリーグ「Shadowverse University League(関連サイト)」などユーザー層ごとにカテゴライズされた大会もあります。
  

――高校生や大学生といった年齢別の大会を設けた背景は。

トップユーザーからすると「RAGE」への出場がモチベーションとなりますが、その手前の受け皿となるものも大事だと思い、様々な世代に合わせた大会を作りました。参加するという意識的な部分のハードルを下げるといった狙いもあります。

また、高校生・大学生大会において良い成績を残すと「RAGE」へのシード権が貰え、さらに勝つと世界大会への出場、優勝すると1億円が貰えるチャンスも巡ってくるといったストーリーを描きながら大会ストラクチャーを構築しています。特に3ヶ月に1度開催している「RAGE」は優勝すると400万円という高額賞金が貰えるので、誰もが気軽に参加できて、勝てば夢があると思ってもらえるような大会にしたいなと思っています。
  

――様々なカテゴライズ化された大会を用意することで、ユ-ザーがステップアップしながら成長できるというのも、『Shadowverse』におけるeスポーツの強みかもしれませんね。

ええ。小さな大会から大きな大会へ出場してくれる人がもっと増えてくれることが理想です。地方の大会を通じて知り合った方たちが、オフライン大会会場の試合観戦ブースで仲間を応援する姿を何度も見ているので、そういった仲間同士で様々な大会に出場するのも『Shadowverse』の醍醐味だと思います。そういうコミュニティ文化を、今後も大事にしていきたいと思っています。
  

――今後の大会もオンラインでの開催がメインとなっていくのでしょうか。

現在、オンライン大会を軸とした運営が一年ほど続いています。しかし、いずれはリアルイベントを再開させたいと考えています。今年の世界大会は、昨年延期になってしまった世界大会と統合した形での開催を予定しており、年末実施に向けて只今準備を進めています。
  

――リアルイベントも今後再開していくとのことですが、オンラインにしたことで参加者にどのような変化がありましたか。

これまで「RAGE」のような大型大会に出場するには東京や千葉の会場へ来ていただく必要がありました。しかしオンラインになったことで地方に住むユーザーの参加ハードルが下がり、「オンライン大会だから出場できた」という声も多くいただいています。そういったユーザー層も意識しながら一人でも多くの方に参加してもらえるよう、今後もオンライン大会は運営していきたいです。
  

――ちなみに過去のリアルイベントにおける最大参加人数はどれぐらいですか。

2020年1月25日・26日に幕張メッセにて開催された「RAGE Shadowverse 2020 Spring バトルフェスティバル powered by SHARP」のときです。ここでギネス世界記録となる「オンライントレーディングカードゲームを同時に同一会場でプレイした最多人数」に挑戦し、結果6,086人が一斉に集まって試合をするという記録を達成しました。
  


▲ギネス世界記録の項目は「同時に同一会場でプレイした最多人数」でしたが、エントリー人数も過去最大の1.1万人越えとなりました。© RAGE © Cygames, Inc.

 

選手ひとりひとりが輝ける舞台へ

――eスポーツというリアルイベントをきっかけに、「RAGE」やほかの大会に参加したユーザーが、ゲーム内でどのように寄与すると考えていますか。

リアルイベントですので、開催後にDAU(Daily Active Users)などゲーム内の数字がどれだけ増えたのかというのは明確には分かりません。ただ、先ほども申し上げたように、大会で誰かが面白いデッキを使用すると、自分も対戦で使いたいという方が増え、今度はそのデッキに対抗するためのデッキが構築されるなど、ゲーム内の環境推移に上手く作用します。そういう意味では、eスポーツを開催することでゲーム内に好循環を与えていると思っています。
  

――大会の成功を表わす指標はどういったものがありますか。

エントリー数・視聴数・会場来場者数などそういった数字情報は大会が成功したかの大きな基準となります。

ですので、大会の担当者は、大会運営・配信のクオリティ、選手へのホスピタリティなどももちろん大事にしつつ、会場に来てもらうため、配信を観てもらうためにはどうすればいいのかという前段階も意識しながら業務を行っています。

少しでも数字を上げられるよう、ゲーム内でそのまま投票できる優勝予想キャンペーンやTwitterを利用したキャンペーンなど、毎回様々な方法で各大会の告知・PRを行っています。

――『Shadowverse』の大会を視聴すると、観戦画面のUIなど見やすい印象がありました。分かりやすさを重視していると見受けられましたが、どのようなところを意識されていますか。

選手の顔を映すことで、どういった反応をしながらプレイしているのか視聴者に伝わるようにしています。ほかにも、選手の持ち時間がわかるようなUIを表示したり、どちらの選手が有利かをリアルタイムで予想して投票できるような機能を実装するなど、ゲームにあまり詳しくない人でも楽しめるような仕組み・UIを用意しています。
  

――UIやカメラの演出など選手をリスペクトした細かな調整が入念にされているんですね。

はい、視聴者の皆さんに楽しんでいただけるような工夫はもちろん、選手の中には初めて配信番組に出る方もいるので、そういった選手が少しでも格好よく映るような演出を行っています。


▲大会の観戦画面。ゲーム画面のみならず、選手の表情がわかるようにカメラを設けています。© RAGE © Cygames, Inc.

 

――それでは、最後に読者へメッセージをお願いします。

過去にユーザーの方とお話をした場面で、「Shadowverseの大会やイベントを通じて色んな方と出会い人生が変わった」と言ってくださった方がいまして、改めてeスポーツ事業がタイトルにも、お客様にも貢献できているんだなと感じました。

そういった方が今後も増えてくれるように、eスポーツ室では、リアルイベントの再開準備や、より多くの方に参加してもらえるような施策を引き続き実施していきたいと考えています。また、大会の配信を観ている方も、イベントに参加したような気持ちになれる演出・プログラムを用意していきたいと考えています。

皆様のおかげで「Shadowverse」は5周年を迎えましたが、今後も常に新しい体験や感動を感じることができ、誰もが楽しめる大会を運営して参ります。

――:本日はありがとうございました。

 

取材・執筆:山崎友喜、原孝則
撮影・編集:NEXT MARKETING編集部

 

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